「知られざるミュシャ展」や「エリザベート展」などで西洋絵画が紹介される事はありましたが、
そごう美術館が西洋絵画一色になるのは近年では久しぶり。コローやミレーなど馴染み深い名前から、さほど知られていない画家の作品まで、幅広くお楽しみいただける企画展です。
会場は4章構成、冒頭は「神話・聖書・文学」です。神話やキリスト教を題材にした「歴史画」は、アカデミスムの世界では絵画の頂点。ヨーロッパでは長く本流とされ、多くの画家が技術を競いました。
1章「神話・聖書・文学」次は「美しさと威厳」、肖像画を描く事は画家にとって生活のための重要な手段でした。王や貴族らが力を持っていた時代には、女性は華やかで美しく、男性は威厳を持った風貌にと、注文に応じて制作。産業革命後には、勃興した中間層向けに、愛らしい少女や神秘的な女性像なども描かれるようになっていきます。
ジョン・エヴェレット・ミレイによる大きな女性像《クラリッサ》は、ラファエル前派から離れた後の作品。展覧会メインビジュアルの《愛しの小鳥》を描いたブーグローは、アカデミーの常連。エティエンヌ・アドルフ・ピオ《花と少女》は、山寺 後藤美術館の看板娘です。
2章「美しさと威厳」 動画後半は順に、ジョン・エヴェレット・ミレイ《クラリッサ》、ウィリアム・アドルフ・ブーグロー《愛しの小鳥》、エティエンヌ・アドルフ・ピオ《花と少女》続いて「静物 ─ 見つめる」。静物画は17世紀に盛んに描かれるようになり、特にオランダとベルギーで発展しました。
アンジェロ・マルティネッティは19世紀イタリアの写実派画家で、静物画が専門。展示されている《鹿と猪のある静物》は極めて正確な描写が特徴的で、「だまし絵」に近いレベル。画面の左下にはハエもとまっています。
3章「静物 ─ 見つめる」 動画最後はアンジェロ・マルティネッティ《鹿と猪のある静物》最後は「風景と日々の営み」。バルビゾン派の絵画を中心に、風景画、農民と農村の絵画、家族らを描いた人物像などが紹介されます。
都市の発達が生んだ、田園への郷愁。バルビゾン派の作品は徐々に受容が進み、その後継者として印象派が登場する事となります。
会場にはコローの作品が3点。それぞれ別の時期に描かれた作品で、描き方がかなり変化している事も分かります。
4章「風景と日々の営み」2013年秋から
Bunkamura ザ・ミュージアム、
ひろしま美術館、
美術館「えき」KYOTOと巡回していた本展。うっかり見逃していた方はラストチャンスです。お見逃しなく。
なお、
そごう美術館は本展以降のスケジュールも発表(
一覧はこちら)。個人的に楽しみは7月4日(土)~7月26日(日)に開催される「没後10年 ロバート・ハインデル展」。「現代のドガ」と称された画家の回顧展です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年1月7日 ]