かつては、イタリア美術史における最も著名な画家に数えられていたグエルチーノ。19世紀半ば以降には、次第に忘れられた存在になって行きましたが、近年は再評価が進み、イタリアでは大きな展覧会が何度も開催されるようになっています。
本展は、日本で初めてのグエルチーノ展。グエルチーノの傑作《ゴリアテの首を持つダヴィデ》を所蔵している
国立西洋美術館が会場です。
1章「名声を求めて」作品は全44点(うちグエルチーノ作品は39点)と「西洋美術の展覧会にしてはやや少なめ?」と早合点しそうですが、会場に入ると思い込みは一変。作品は3点のフレスコを除いて全て油彩、しかもかなり大型の作品が多く、圧倒されるほどの迫力です。
構成は5章で、ほぼ年代順に進みます。
1章 名声を求めて
2章 才能の開花
3章 芸術の都ローマとの出会い
4章 後期① 聖と俗のはざまの女性像 ─ グエルチーノとグイド・レーニ
5章 後期➁ 宗教画と理想の追求
2章「才能の開花」ほぼ独学で絵の技術を身につけたグエルチーノ(ちなみに「グエルチーノ」は「斜視の小男」という意味のあだ名です)。生まれ故郷のチェントで制作を始めた後、ボローニャでも成功。さらに芸術の都・ローマでも活躍し、イタリアを代表する画家にのぼり詰めます。
展覧会メインビジュアルの《聖母被昇天》は、ローマ滞在中に完成し、チェントに持ち帰られたと思われる作品。極端な見上げの構図で、聖母マリアの昇天をドラマチックに表現しています。
3章「芸術の都ローマとの出会い」本展は作品の多くがグエルチーノの出身地であるチェント市立絵画館から出品されていますが、チェントは2012年5月に大地震に見舞われ、市立絵画館も被災しました。
絵画は守られたものの運び出され、絵画館は現在も閉館したまま。復旧のめども立っていません。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられます
4章「後期① 聖と俗のはざまの女性像 ─ グエルチーノとグイド・レーニ」、5章「後期➁ 宗教画と理想の追求」報道では「知られざる画家」という紹介も散見されますが、存命中はイギリス国王やフランス国王からも宮廷に招聘されるなど(いずれも辞退しています)、その名声はヨーロッパ中に響いていたグエルチーノ。ほの暗い展示室で見ると、後ずさりしてしまうほどのインパクトです。
国立西洋美術館だけでの単独開催です。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年3月2日 ]