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    レポート
    エドワード・スタイケン写真展
    世田谷美術館 | 東京都
    称賛と批評、挑戦的な写真史の巨星
    20世紀写真史の巨星、エドワード・スタイケン(1879~1973)。約70年にわたって広い分野で活躍したスタイケンの歩みの中から、商業写真界で活躍した1920-30年代の作品を紹介する展覧会が、世田谷美術館で開催中です。
    左はメインビジュアルの《女優グロリア・スワンソン》1924年
    《アール・デコふうの大判スカーフをまとうタマリス》1925年(右)
    “ルーヴルで見るから芸術なんだよ。『ヴォーグ』をルーヴルにしよう”
    左端は二度にわたって英首相を務めた《ウィンストン・チャーチル》1932年
    「私が撮影したなかで、いちばんすばらしいファッション・モデル」というマリオン・モアハウス
    1892年から現在までに発売された米国版『ヴォーグ』誌すべてのページが見られる「ヴォーグ・アーカイヴ」
    会場
    “人間がこれまで受けついできた大地や空の美しさも、そこでつくりだした富も混乱も、写真の対象である。”
    会場入口
    青年期の芸術的な写真から、冷戦期の一大写真展「ザ・ファミリー・オブ・マン」まで、約70年に渡って第一線で活躍したスタイケン。本展はパリを皮切りに欧米各地を巡っている国際巡回展です。

    世田谷美術館での本展は、15年間を3期に分けた章構成です。

    第1章 アール・デコの息吹 ─ 1923~1926
    第2章 光と影の日々 ─ 1927~1931
    第3章 永遠の瞬間 ─ 1932~1937


    メインビジュアルの《女優グロリア・スワンソン》から、会場風景

    20代前半から活躍していたスタイケンは1923年、44歳のときに大手出版社のコンデ・ナスト社の主任写真家に就任。展覧会はこの時期からの作品を追います。

    約200点のファッションとポートレート写真は、主に「ヴォーグ」誌と「ヴァニティ・フェア」誌に掲載されたもの。現代にも通じるような洗練されたビジュアルですが、日本では関東大震災から盧溝橋事件までの時期にあたります。

    会場各所には、スタイケンが語った印象的な言葉も紹介されています。

    「いつの時代でも、いちばんいいものはすべて商業芸術だった。」は、50歳の時に出版された写真集に書かれたもの。大衆が求めるものを敏感に察知していたスタイケンの挑戦的な言葉ですが、当然、芸術家寄りの写真家や批評家から大きな反発を受けました。


    “いつの時代でも、いちばんいいものはすべて商業芸術だった。”

    多くのモデルを魅力的に撮影したスタイケンですが、一番のお気に入りだったのは、このマリオン・モアハウスです。

    「モアハウスも私も、ファッションそのものには関心がなかった。ただ、彼女は撮影用の服にそでを通したとたん、それがドレスであれ乗馬服であれ何であれ、いかにもそれを身にまといそうな女性に変身することができたのである。」と評します(『ある写真人生』1963年)。


    マリオン・モアハウスを集めたコーナー

    展覧会は、スタイケンがコンデ・ナスト社を去った1937年まで。スタイケンは商業写真からの引退を宣言しますが、その後も自分のペースで写真を撮り続けました。大戦では空母に乗船して撮影。戦後はMoMAの写真部長となり、前述の「ザ・ファミリー・オブ・マン」を企画して、大ヒットしました。ただこの写真展も「米国イデオロギーの宣伝興業」という批判にも晒されています。

    1973年3月に93歳で死去。華々しい活躍の一方で、その業績について未だに毀誉褒貶が激しい人物です。


    会場

    展覧会でぜひ見ていただきたいのが「ヴォーグ・アーカイヴ」。1892年から現在まで、120年以上発行されている米国版「ヴォーグ」誌の全ページ(広告ページまで!)をPCで閲覧できるコーナーです。40万ページ以上をフルカラーでデジタル化。本来は有料ですが、本展では株式会社WGSNの協力により、会場に設置された2台のPCで無料で楽しめます。

    ちょうど没後40周年に日本開催となりましたが、国際巡回展でありながら日本開催は世田谷美術館のみ。モードや写真が好きな方は、お見逃しなく。(取材:2013年1月29日)

    エドワード・スタイケン [大型本]

    エドワード・スタイケン (著), 世田谷美術館 (著)

    クレヴィス
    ¥ 2,400

     
    会場
    会期
    2013年1月26日(土)~2013年4月7日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
    休館日
    毎週月曜日 ※ただし2月11日(月・祝)は開館、翌日の2月12日(火)は休館
    住所
    東京都世田谷区砧公園1-2
    電話 03-3415-6011
    公式サイト http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
    料金
    一般 1000円(800円)、65歳以上800円(640円)、
    大高生 800円(640円)、中小生 500円(400円)
    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※障害者の方は500円(介助の方1名までは無料)、大高中小生の障害者の方は無料。
    展覧会詳細 「エドワード・スタイケン写真展 モダン・エイジの光と影 1923-1937」 詳細情報
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