細見美術館 「生誕300年記念 伊藤若冲 ─ 京に生きた画家 ─」
撮影・文 [エリアレポーター]
白川瑞穂 / 2016年7月27日
モノクロームの若冲を堪能!
今年、生誕300年を迎え、ますます人気沸騰中の伊藤若冲。今、京都の細見美術館で、当館や京都の若冲ゆかりの寺院が所蔵している作品を中心にした展示が開催されています。
若冲といえば、まずは真っ先に、鮮やかな色彩で描かれた「動植綵絵」を思い浮かべられる方が多いのではないでしょうか。今回の展示でも、動植綵絵を思わせる、鶏を精密に描いた作品が最初のパートで展示されています。
伊藤若冲《雪中雄鶏図》
しかし、素晴らしい画力をほぼ独力で身につけた若冲作品の魅力を十二分に感じられるのは、実は水墨画ではないかと思います。
伊藤若冲《花鳥図押絵貼屏風》左隻
紙や墨、筆の性質、描くときの筆のスピード、濃淡、全て熟知し計算したうえで描かれた作品たち。
伊藤若冲《鼠婚礼図》
ただ描かれているのは、現代のゆるキャラのような愛嬌のある動物だったりして、絵に必要以上の緊張感をにじませることなく、観る者を笑顔にさせてくれます。
家督を弟に譲り、今でいう引きこもりに近いような形で絵の世界に没頭していた若冲は少々変わった人物だと受け止められていたのかもしれませんが、身の回りの生き物に対する優しいまなざしから、心やさしくちょっとおちゃめな人だったのではと思わずにはいられません。
伊藤若冲《糸瓜群虫図》
この絵には11匹の小さな虫が描かれています。私は8匹しか見つけることができませんでしたが、全部わかりますか?
晩年には郊外に移り住むことになり、昔のように貴重で高価な画材を使うことができない状況にあったという事情もありますが、若冲の水墨画は若い頃よりも晩年に多く描かれており、余計なものをそぎ落としたシンプルな作品、一見地味なモノクロームの世界に若冲の独特な世界観が広がっています。若冲イヤーの今年、若冲が生きた京都でのこの展示で、ぜひ体感してみてください。
ところで、この展示の図録が製作・販売されていなかったのは少し残念でした。
2014年に発行された、細見美術館所蔵の若冲作品を中心とした「伊藤若冲と京の美術」(青幻舎)には、今回出品される若冲作品19点のうち、15点が収録されているそうですので、こちらを買いました。
伊藤若冲と京の美術 ―細見コレクションの精華 (2,700円)
他にも琳派の作品などが掲載されていて、考えようによってはお得かもしれません。
※画像提供 細見美術館
エリアレポーターのご紹介
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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