国立国際美術館「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2016年10月21日
色彩の祭典 見よ、これがヴェネツィア・ルネサンス
東京の国立新美術館で開催された、「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展が巡回して大阪にやってきました。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《受胎告知》(1563−65年)、ヴェネツィア、サン・サルヴァドール聖堂所蔵
日本初公開のこの作品はティツィアーノの晩年を代表する作品で、なんと高さは約4mもあります。
この展覧会では、1400年代から1630年代までのヴェネツィア・ルネサンスの作品を中心に、約60点の名画が展示されています。この約200年の間に制作されたヴェネツィア・ルネサンス美術は、その後の美術史に大きな影響を及ぼしました。アングルやジェリコー、ドラクロワを始めとし、クールベ、ラトゥール、マネ、セザンヌからドラン、シャガールに至るまで錚々たる画家がこぞってルーヴルでその作品を模写したと言われています。
ルネサンスの発祥の地であるフィレンツェの、明快なデッサン、着彩、整然とした構図とは異なり、ヴェネツィアでは、自由奔放な筆致による豊かな色彩の表現や大胆かつ劇的な構図を持ち味とし、感情や感覚に直接訴えかけるような絵画表現が花開きました。
この展覧会では、ヴェネツィア・ルネサンスの初期、中期、後期に分かれて展示が行われ、多数の肖像画も展示しています。
以下に展覧会の様子を写真とともにご紹介します。
左から、ヤコポ・ティントレット《動物の創造》(1550−53年)、ヴェネツィア、アカデミア美術館所蔵、ヤコポ・ティントレット《アベルを殺害するカイン》(1550−53年)、ヴェネツィア、アカデミア美術館所蔵
左の作品に描かれているのは、神の世界創造を記した「創世記」において、世界創造五日目の「水の生き物の創造、鳥の創造」、そして六日目の「動物の創造」の場面です。この作品では、すべての動物が、右手に祝福のポーズを取る父なる神に付き従って左から右へと大移動しています。
左から、フランチェスコ・モンテメッザーノ《ヴィーナスに薔薇の冠をかぶせる二人のアモル》(1580年頃)、ヴェネツィア、アカデミア美術館所蔵、パルマ・イル・ジョーヴァネ《聖母子と聖ドミニクス、聖キュアキントゥス、聖フランチェスコ》(1595年)、ヴェネツィア、アカデミア美術館所蔵
左の作品に描かれている女性は、モンテメッザーノの作品に度々登場する女性像であることが近年の研究で明らかになっています。この作品には、ティツィアーノの官能的な女性像に挑戦する意図があるのではないかと言われています。
右から、ドメニコ・ティントレット《サン・マルコ財務官の肖像》(1600年頃)、ヴェネツィア、アカデミア美術館所蔵、ヤコポ・ティントレット《統領アルヴィーゼ・モチェニーゴの肖像》(1570年頃)、ヴェネツィア、アカデミア美術館所蔵
こちらは展覧会風景です。
ヴェネツィア政府の高官の肖像はその地位にふさわしい衣装をまとい、威厳のある精神性を持って表現されています。ご紹介した、ヤコポ(父)とドメニコ(息子)はこの分野でも傑出した存在でした。
展覧会の最後にはこのように、まるでヴェネツィアの貴族になったかのような気分を味わえる写真スポットもありました。
美術史に大きな影響を与えた、ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠の作品の色彩をぜひ体感してください。
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胤森由梨
美術が大好きな大学院生です。将来は美術鑑賞に関わる仕事がしたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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