こんなの見たことない!衝撃の美しさ!もう見ましたか?あのバベルの塔が満を持してついに来日!
東京で大盛況だった、「ブリューゲル バベルの塔」展が国立国際美術館にやってきました。約四半世紀ぶりに来日したブリューゲルの大傑作を心ゆくまでとことん楽しみましょう。
さて、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、このバベルの塔、実は三つあります。今回の展覧会で見られる、ブリューゲルの「バベルの塔」は三作目。
とは言っても、ジュリオ・クローヴィオと共同で制作した一作目のバベルは残念ながら現存していません。
のちに描かれた二作目・三作目の礎となった絵がどんなものだったのか気になるところです。
このレポートでは、ウィーン美術史美術館に所蔵されている、ブリューゲル二作目の《バベルの塔》と、三作目の《バベルの塔》を比較し、両者の違いを明らかにしていこうと思います。
ではまず二作目からご紹介します。(本展覧会では二作目は展示されていません)
ピーテル・ブリューゲル1世《バベルの塔》(1563年)。
こちらは、私が先日ウィーンの美術史美術館に行った際に撮影してきました。
左下前景では、ニムロド王が何やら指示を出しています。(ニムロド王とは「ノアの箱舟」でおなじみのノアのひ孫です)
そして画面中央にはニムロド王が人々を説得して造らせた「バベルの塔」がどどんと描かれています。
さて、建物の作りに注目してみましょう。二作目のバベルの塔は建物の外側が石で、内側はレンガで建てられています。
そして、二作目完成から約5年後に描かれた三作目がこちら。
ピーテル・ブリューゲル1世《バベルの塔》(1568年頃)。
三作目のこちらのバベルには、ニムロド王の姿はなく、塔はすべてレンガで建てられています。
塔をよく見てみると、アーチの形状が二作目と三作目では大きく異なっていることがわかります。
二作目では、塔の中央から上部と下部でアーチのデザインが異なっていますが、三作目では、長い年月を経て建築されたからでしょうか、階層ごとにアーチのデザインが異なっています。
また、塔の中央部分にはカトリックの教会堂を思わせるアーチ型の窓があり、その付近に宗教行列の一行が見えることから、この三作目のバベルの塔には、人が居住し、教会も機能しているということがわかります。
さて、今回の展覧会では、このバベルの展示に合わせて、東京藝術大学COI拠点が特別協力した拡大複製画が展示されています。
細部にまで趣向が凝らされたブリューゲルのバベルを見るために、単眼鏡があればベターですが、この拡大複製画でも細部までご覧いただけます。
また、会場の外には、「AKIRA」などの漫画で知られる、大友克洋氏がバベルの塔の内部がどうなっていたのかを考察し、それを描いた「INSIDE BABEL」も公開中です。
では最後に必ず見ていただきたい、個人的にオススメな作品を2点ご紹介します。
こちらはヒエロニムス・ボス《放浪者(行商人)》(1500年頃)。
中央に描かれている人物は、カゴにかけられた猫の皮と木の杓を用いた商売をする行商人。
この男、大変貧しいようで、左右でちぐはぐな靴を履いています。
後ろ髪引かれるような表情の男の後ろには娼館が描かれていますが、この男は宿から出てきたばかりでしょうか。それとも、ただ通りすぎただけでしょうか。
こちらはピーテル・ブリューゲル1世、彫版ピーテル・ファン・デル・ヘイデン《農民の婚礼の踊り》(1570-1572年頃)。
この作品は、ブリューゲルが亡くなってからかなり後に彫られた作品で、ブリューゲルの油絵作品でおなじみのモチーフがあちこちに見受けられます。
ブリューゲルの油絵作品は40点余りと大変少ないので、これを機に全作品を解説書でチェックし、どのモチーフが繰り返し描かれているのか、という視点で作品を見ても面白いかもしれません。
会場 | 国立国際美術館 |
開催期間 | 2017年7月18日(火)~10月15日(日) |
休館日 | 月曜日 ※ただし、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館 |
開館時間 | 10:00 ~17:00、金曜日、土曜日は21:00まで(入場は閉館の30分前まで) |
所在地 | 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 |
06-6447-4680 (代) |
HP : http://babel2017.jp/ |
料金 | 一般 1,500円、大学生 1,200円、高校生 600円 |
展覧会詳細へ |
「ブリューゲル「バベルの塔」展」詳細情報 |
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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