練馬区立美術館では、「ラリック・エレガンス 宝飾とガラスのモダニティ ― ユニマットコレクション ―」展が開催中です。
アール・ヌーヴォーのジュエリー作家として、またアール・デコのガラス工芸家として活躍したルネ・ラリック。
その2つの側面をもとに、本展では一躍有名となったパリ万国博覧会前後の年代に製作されたジュエリーから、晩年のガラス花瓶までが通観できます。
第1章は、アール・ヌーヴォーのジュエリー。
ペンダントやブローチが20点と、製作過程を窺い知ることのできるドローイング、テストピース数10点が並びます。
ネックレス《花》 1900-1905年頃 金、ガラス、バロック真珠
ネックレス《花》(部分)
こちらの花の部分がガラスでできたネックレスは、着用時には見えない花びらの中まで丁寧に作られていました。
ペンダント/ブローチ《ケシの女》 1898-1900年頃 銀、ガラス、バロック真珠 共箱付
また、こちらのペンダントを含む3点は、それぞれ独立した小さな展示ケースのお陰で、女性の表情がはっきりとわかるほどの至近距離で鑑賞できました。
珍しい所では、鋳造の原型を試したと思しき金属片のテストピースがありました。
テストピース《コティの香水瓶レフルールのシール》 1905-1908年頃 技法・素材不明
完成品のジュエリーにみられる細やかさと比較すると、テストピースの方は大まかな造形を確認しているといった感じです。
初めから精密な型を作って製作していた訳ではないのだなと想像されます。
第2章は、アール・デコのガラス。
アール・ヌーヴォーの装飾性とは対象的に、シンプルでモダン、かつ実用性のあるアール・デコのガラス工芸品が180点強。
時代の変化を先読みしたかのようなラリックの転身には、驚くばかりです。
夫婦円満の象徴である雌雄のセキセイインコの花瓶は、当時の結婚祝いとして喜ばれたそうです。
左)花瓶《セイロン》 1924年 オパルセントガラス、プレス成形、パチネ / 右)鉢《セキセイインコ》 1931年 オパルセントガラス、プレス成形、パチネ
文字盤のインコが特にキュートな置時計も出品されていました。
小型置時計《セキセイインコ》 1926年 オパルセントガラス、プレス成形、文字盤は金属と象牙、彩色画
置時計は、当時としてはまだ珍しい電池式です。
こちらもプレゼントとして贈られたものでしょうか。
化粧セット《ダリア》 1931年 / 奥左、中央)化粧瓶 No.2 / 奥右)アトマイザー No.3 透明ガラス、型吹き成形、栓はプレス成形、エナメル彩、パチネ / 手前左)蓋物 No.3 / 手前右)蓋物 No.2 透明ガラス、プレス成形、エナメル彩、パチネ
使うほど優雅な気分になれそうな化粧瓶などは、実際に使ってみたいところです。
左)グラスセット《ティオンヴィル》 1924年 透明ガラス、型吹き、脚部プレス成形、エナメル彩 / 右)グラスセット《タン》 1924年 透明ガラス、宙吹き、脚部プレス成形、エナメル彩
ラリックの中では断然シンプルなグラスセットですが、アクセントとなるデザイン部分にアール・ヌーヴォーの雰囲気が残されているように感じます。
花瓶《蝶》 1936年 透明ガラス、プレス成形、羽の熔着
晩年に製作された花瓶には装飾性が高いデザインのものがあります。
まるで、時代に逆行したか、昔を回顧したかのように。
時代に合わせて売れる物を製作していたかのようなラリックが、本当に作りたかったのは何だったのだろうかと、思いを馳せました。
※写真はすべて、許可をいただいて撮影をしています。
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