貴重な文化財を保存しながら活用するために、複製や復元といった技術が用いられます。
本展で紹介される古代の楽器は、当時奏でられてたであろう“音”を蘇らせるために製作されました。
無形の音の復元です。
それ自体の復元ではなく、音の復元のために製作された楽器とは、一体どのような姿になるのでしょう?
そして、古代の“音色”とは、どんな音だったのでしょうか?
奈良の正倉院には、儀式に用いられた楽器や、その残欠が遺されています。それら遺品や、中国古代の遺跡出土品を参考に、本展の楽器は製作されました。
目的は、当時の音色を復元すること。演奏時の機能性や実用性が優先され、装飾は省かれました。
元々は、荘厳な装飾が施されていたようですが、ここではどの楽器もすっきりとした姿になっています。
展示されている楽器の一部をご紹介します。
編鐘(へんしょう)
大篳篥(おおひちりき)
編鐘(へんしょう)は、大小の青銅製の鐘が音階順に吊り下げられた古代中国の楽器です。
演奏の際、2オクターブの音域を出せるよう、 たたく位置によって音が変わる13個の鐘がつけられています。
大篳篥(おおひちりき)は平安時代中期に廃絶したといわれ、正倉院にも現物は遺っていません。
そのため、文献を参照し、現存する篳篥からその形を推定することで復元されました。
五絃琵琶(ごげんびわ)
箜篌(くご)
五絃琵琶(ごげんびわ)は、インドに起源をもつ楽器で、唐の時代の中国において流行しました。
正倉院が所蔵する「螺鈿紫檀五絃琵琶」が現存する唯一の五絃の琵琶です。
現物には全面に美しい装飾が施されていますが、ここでは省かれています。
箜篌(くご)は、アッシリア発生の竪琴。強力な絃の張力に耐えるために、胴部分と腕木の間に支柱を差し込んで、腕木を支えていることが、復元作業で判明しました。
阿弥陀聖衆来迎図
会場には、来迎図や曼荼羅、ガンダーラ仏伝浮彫など、楽器が登場する仏教美術も展示されています。
併せて観ることで、仏教と音楽が密接な関係を持っていることが分かります。
多くの展示品は、ケースに入れられることなく展示されているので、直接じっくりと鑑賞することもできます。
展示風景1
展示風景2
製作された楽器それぞれの音は、会場内に設置してあるデジタル端末で聞くことができます。
また、3階にあるホールにて、これらの楽器を使用した演奏映像を視聴できますので、古代の楽器の旋律や共演も楽しめます。
「復元された古代の音」は、是非、会場で体験してみてください。
エリアレポーターのご紹介
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nakane
作品自体もそうですが、展示されている空間も好きです。展示風景や雰囲気など、図録や公式HPの記録には残りづらいことを、一ファン目線で捉え、共有出来たらなと思います。
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