本コレクションを蒐集した池田文夫氏は明治四十年に七尾市に生まれ、戦後まもない昭和二十三年に岐阜県大垣市で和興紡績株式会社を設立します。そして中部石川県人会会長や日本経営者団体連盟常任理事など、中部地方を代表する経営人として活躍し、昭和六十二年に八十歳で亡くなりました。
氏にはその多岐にわたる功績に対して藍綬褒章が贈られた他、岐阜県大垣市からは産業功労賞、また昭和五十九年には当七尾市の名誉市民に推挙されています。
また、氏は美術品に対して大変興味を持ち、その蒐集に情熱を注ぎました。それは若かりし頃、貰ったばかりのボーナスをそっくり作品の購入にあて、夫人に空の袋を渡して驚かせたという事がたびたびあったという話からも窺われます。氏の美術品に対する姿勢は、作品をあれこれ難しく考えるのではなく、とにかく気に入った作品を純粋に「いじる」事を至福としたといいます。
氏没後の昭和六十三年及び当館が開館した平成七年に、ご遺族より一四十七点の作品のご寄付を受けました。その内容は滞在した岐阜県美濃地方にゆかりが深い「黄瀬戸」「志野」「織部」などの陶器類を中心とした茶道美術館と、日本の近現代絵画からなっており、そこからは氏のスケールの大きい人となりや、美術品に対する優れた鑑識眼を見ることができます。
現在この美術コレクションを「池田コレクション」と呼んでいますが、本展ではその内計五十一点の作品を紹介します。