平塚運一　木口木版画展

平塚運一は、少年時代に英語の教科書「ナショナル・リーダー」の挿絵の木口木版に興味を抱きました。木版画制作を始めた頃、ビュランの入手も難しかった時代に、平塚は代用として硬い木に三角刀を用いて木口木版風な作品を試みています。やがて道具と技法を習得し、意欲的に木口木版画の制作にとりくみました。特に、レンパツという何本かの線を一度に彫れる刀を好んで用い、線がリズムを刻むような独特の作風は、他の版画家達にも影響を与えています。 若き日の平塚運一にとって、独自のスタイルにたどりつくまでの過程は、様々な表現方法や未知の技法を試み、探求する作業でもありました。平塚の長い画業のなかで木口木版の作品は決して多くはありませんが、技法書や講習会を通じて、木口木版技法の紹介につとめた功績も忘れてはならないでしょう。この展覧会では、平塚の木口木版と木口木版風の作品約50点をとおして、日本の近代版画史を切り拓いた平塚運一の画業の一端を紹介します。