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    レポート
    咲き誇る花、舞い飛ぶ鳥 ― 「美術のあそびとこころ―花と鳥―」(レポート)
    三井記念美術館 | 東京都
    花と鳥をテーマに、美術工芸品に表れた自然へのまなざしを紹介する展覧会
    時代や技法を超えた名品がずらり。絵画や工芸など、幅広いジャンルの作品
    季節や吉祥を意識した構成など。作品を通じて自然との深いつながりを体感

    咲き誇る花々、舞い飛ぶ鳥たち。自然の中でもとりわけ人の心をひきつけてやまない「花」と「鳥」は、古来より美術工芸において愛されてきたモチーフです。

    季節を彩り、吉祥をあらわし、ときに主役、ときに背景としてあらわれる花と鳥の姿。そうした表現が見られる屏風、掛軸、工芸品など、館蔵品から選び抜かれた名品・優品を紹介する展覧会が、三井記念美術館で開催されています。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」会場入口
    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」会場入口


    会場の冒頭には、美しい青磁の色合いが目を引く《青磁浮牡丹文不遊環耳付花入》が展示されています。大きく咲いた牡丹の花が胴部に表されており、柔らかな花びらの質感まで丁寧に造形されています。

    牡丹は、富や高貴さを象徴する「富貴の花」として親しまれてきました。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 《青磁浮牡丹文不遊環耳付花入》南宋~元時代・13~14世紀
    《青磁浮牡丹文不遊環耳付花入》南宋~元時代・13~14世紀


    《紫陽花蒔絵茶箱》には、蓋と側面に6本のアジサイの枝が金銀の蒔絵や切金で繊細に描かれています。両側にはアジサイの葉をかたどった銀製の紐金具があしらわれ、赤い組紐がアクセントになっています。

    中にはすべて銀製の道具が納められ、夏の花アジサイの涼やかなイメージとよく調和しています。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 《紫陽花蒔絵茶箱》江戸時代・19世紀
    《紫陽花蒔絵茶箱》江戸時代・19世紀


    中国・江西省の吉州窯で焼かれた玳皮盞(たいひさん)は、鼈甲のような釉薬の色味が特徴です。

    重要文化財《玳皮盞 鸞天目》の見込みには、長い尾をなびかせて飛ぶ二羽の鳥が描かれており、これは吉祥をもたらすとされる空想上の鳥「鸞(らん)」といわれています。神秘的で優雅な姿が魅力です。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 重要文化財《玳皮盞 鸞天目》南宋時代・12~13世紀
    重要文化財《玳皮盞 鸞天目》南宋時代・12~13世紀


    《鳥類真写図巻》は、江戸時代の画家・渡辺始興が実に24年をかけて描いた長巻作品。全長約17.5メートルにもおよび、63種の野鳥が生き生きと表現されています。

    鳥の大きさや羽の色などの細かな記録からは、始興の深い観察眼と自然への敬意が伝わってきます。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 渡辺始興《鳥類真写図巻》江戸時代・18世紀
    渡辺始興《鳥類真写図巻》江戸時代・18世紀


    中央に黄色い牡丹の花、そのまわりを二羽の鳥が囲む《交趾金花鳥香合》。鳥は長い尾をもち、鳳凰を思わせる姿から「金花鳥(きんかちょう)」と呼ばれています。

    これは中国・福建省南部の窯で焼かれた交趾(こうち)焼の一例で、東アジアにおける鳥の意匠の豊かさがうかがえます。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 《交趾金花鳥香合》明時代・17世紀
    《交趾金花鳥香合》明時代・17世紀


    《色絵雉香炉》は、明治から大正期に活躍した陶芸家・永樂妙全による作品。国宝「色絵雉香炉」(野々村仁清作)を思わせる構成で、キジの姿を写実的かつ華やかに再現しています。

    赤、青、緑に金彩を施し、羽や尾の細部まで緻密に表現されています。鳥好きとして知られる新町三井家に伝わったものです。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 永樂妙全《色絵雉香炉》明治~大正時代・20世紀
    永樂妙全《色絵雉香炉》明治~大正時代・20世紀


    清時代の画家・沈南蘋(しん・なんぴん)による花鳥動物図も見逃せません。濃密な彩色と写実的な描写を得意とした沈南蘋は、日本の円山応挙や伊藤若冲にも影響を与えた人物です。

    今回は、北三井家に伝わる全11幅のうち、花と鳥が描かれた6幅が展示されています。彩り豊かで生命感あふれる構図が見どころです。


    三井記念美術館「美術のあそびとこころ―花と鳥―」 沈南蘋《花鳥動物図》清時代・18世紀
    沈南蘋《花鳥動物図》清時代・18世紀


    花と鳥を通して、人々が自然に込めた祈りや美意識を感じることのできる本展。多彩な作品を通じて、自然と芸術のつながりをあらためて味わうことができます。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年6月30日 ]

    ※作品はすべて三井記念美術館蔵

    《菊蒔絵平棗》江戸時代・17世紀
    珍しく展示室3「如庵」再現展示ケースに展示されています(左手前) 国宝《志野茶碗 銘卯花墻》桃山時代・16~17世紀
    三井高福《海辺群鶴図屏風》明治18年(1885)
    土佐光起《水辺白菊図》江戸時代・17世紀
    会場
    三井記念美術館
    会期
    2025年7月1日(火)〜9月7日(日)
    開催中[あと51日]
    開館時間
    10:00〜17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日(但し7月21日、8月11日は開館)
    住所
    〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館7階
    電話 050-5541-8600 (ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.mitsui-museum.jp/index.html
    料金
    一般 1,200(1,000)円
    大学・高校生 700(600)円
    中学生以下 無料
    ※70歳以上の方は1,000円(要証明)。
    ※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
    ※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。
    ※障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)。
    展覧会詳細 「花と鳥」 詳細情報
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