ピーター・クック(1936-)ら、6人の建築家がメンバーだったアーキグラムは、詩と建築、デザインなどの分野を自在に横断し、消費社会における新しい建築や都市の姿を、当時のSFコミックスや広告などのイメージを引用しながら、ポップなグラフィックやコラージュで表現しました。巨大な都市に昆虫のような脚がついており、居住者が希望する場所へ移動する「ウォーキング・シティ」や、着脱可能な空間ユニットを集合住居やオフィス、店舗など多様な用途にあわせて組み立てた「プラグイン・シティ」など、彼らの奇抜なアイデアは『アーキグラム』誌上での実験に留まり、実際に施工されたものはありません。しかし建築界のビートルズとも呼ばれる前衛的かつユーモアにあふれた姿勢はレム・コールハウスやザハ・ハディッドなどの建築家だけでなく、ポール・スミスなどのデザイナーにも影響を与えました。2002年には建築界で最も栄誉ある賞とされる英国王立建築家協会(RIBA)のゴールドメダルを受賞するなど、今日彼らの先見の明が注目を浴び、再評価されています。
その彼らの回顧展である「アーキグラムの実験建築 1961-74」展が、1994年のデザインミュージアムと欧米アジア諸国を巡回し、11年を経てようやく日本で開催されるはこびとなりました。
アーキグラムのメンバー自らの展示デザインによって、300点以上のドローイングや、コラージュ、模型でアーキグラムの全貌が公開されるとともに、当時の生き生きとした雰囲気が再現されます。
※日本では、水戸芸術館だけの開催となります。