この作品は、現在、当館所蔵作品の代表作となっており、この作品を得て以降、フランス近代絵画を中心とした活発な蒐集活動がなされ、印象派からエコール・ド・パリまでの37作家106点に及ぶフランス近代絵画コレクションが形成されるに至りました。本コレクションは美術史的にみて系統立てて蒐集されたものではありませんが、松岡清次郎という独自の審美眼によって取捨選択された、一つ一つの作品が大変魅力に富むコレクションとなっております。
今展では、そうしたフランス近代絵画コレクションから、モネ、ルノワールなどの印象派からピカソなどの作品まで20作家約40点を展示いたします。主な出品作として、印象派では、ノルマンディ沿岸の町サン・タドレスの海岸風景を描いたモネの初期の傑作「サン・タドレスの断崖」や、愛らしい幼児の表情を柔らかなタッチのパステルで描いたルノワールの「リュシアン・ドーデの肖像」。風景画家として知られるピサロが描いた稀少な静物画作品「丸太作りの植木鉢と花」。また新印象派では、装飾的な点描描写を試みたシニャックの「サン・トロペの港」や、クロッスの「遊ぶ母と子」。20世紀以降ではエコール・ド・パリの画家たちの作品があげられ、ユトリロ、モディリアーニ、ローランサン、ピカソ、藤田嗣治、シャガール、キスリングなど主要な作家の作品がほとんど網羅され、今展の大きな見所の一つとなっています。このたびの展観を多くのお客様にご覧いただき、近代フランスの画家たちの豊かな感性と表現力にふれていただけたら幸いです。