ものの形、風景……およそ視覚的に認知しうるもののすべては、光と、それが生み出す陰によって立ち現れてくる。勝井三雄の仕事の原点は、この発見、この驚きにあるといっていい。そこに見られるのは、固定した、あるいは線形的な世界観ではなく、刻一刻と変化する関係性の網の目から、自ずと何ものかが自己生成していくような世界観である。さまざまなメディアを通して、勝井が一貫して追求してきた、形、色、テクスチュアといった視覚言語の組織化も、そのような世界観の反映であり、ゆらぎの中で、勝井は常に新たな意味、新たな価値を探り当て、紡ぎ出そうとしてきたのである。
もとより、すべては光から始まっている。やがて勝井は、情報の視覚化というグラフィックデザインの主要な領域で仕事を重ねる一方で、電子メディアとの出会いをひとつの契機に、「光」そのものを主題とした、あるいは色彩を中心に、光がもたらす多様な視覚イメージを探究する作品を次つぎに展開していく。それは、ロゴスの就縛から解き放たれた「感性」そのものが形づくる意味空間であり、その鮮烈なヴィジョンは、ヴィジュアル・コミュニケーションにおける、まったく未知の可能性を示すものであるといえよう。
グラフィックデザインという領域から、新たな領界「ZONE」を拓いてきた勝井三雄の50年におよぶ軌跡。本展はその中から「光」に焦点を当てることで、勝井の創造の原点と到達した地平を解き明かそうとするものである。