本年は、日本コロムビアの前身、日本蓄音器商会が、国産第1号蓄音機、“ニッポノホン”を製造・発売してより、ちょうど100年目にあたることもあり、今回は、蓄音機とレコードそのものに光をあて、現物資料と共に、パネル解説をより充実させ、ご紹介しております。また、実演コーナーを設け、開館時を除く、毎時00分に1度、実際に音色をお楽しみ頂ける内容ともなっております。 「好きな時に音楽を取り出して、楽しみたい」-という人類共通の願いを受け、今から133年前の、1877年(明治10年)、トーマス・エジソンによって、蓄音機は産声を上げました。 エジソンの円筒シリンダー式蓄音機・レコードは、当初、音楽を楽しむ機械というよりは業務用を目的として発明された為、複製技術が整っておらず、当時、演奏家が音楽を録音する際には、周囲に何台もの蓄音機を並べ、朝から晩まで、同じ演奏を繰り返し、録音しなければならないという苦労もありました。そこで、エジソンの発明から10年後の1887年(明治20年)、エミール・ベルリナーによって、音楽を楽しむ娯楽用機械として、円盤ディスク式蓄音機・レコードが発明されると、大量生産が可能となり、一般家庭にも広く普及されるようになりました。それまでは、演奏会等へ足を運ばなければ楽しむことができなかった音楽が、家に居ながらにして、楽しむことが出来るようになり、音楽の世界が広がったことは、大きな功績といえます。このように蓄音機・レコードが発明されてより、技術・改良が重ねられ、私たちの生活にとって、音楽がより身近なものとなり、音楽芸術の楽しみ方をも一変させた、その音楽普及に果たした役割について、あらためて、実感して頂ける展示ともなっております。このたびの展示では、お客様にアコースティック・サウンドの魅力を存分に味わって頂くため、実演コーナーを、まるで当時にタイムスリップしたかのような、暖炉のある自宅の居間の雰囲気を演出させて頂いております。実演では、エジソンの円筒シリンダー式レコードをアンベロー50型で、円盤ディスク式レコードを蓄音機の最高傑作、“蓄音機の王様”といわれるビクトローラ・クレデンザ等で、お聞き頂きます。「歌は世につれ、世はうたにつれ」とあるとおり、歌がその時代を作り、歌を聴けば、その時代が浮かんでくることを、昔を思い起こしながら、嬉しそうに語られるご来場者の姿から、日々実感いたします。と同時に、音の芸術品「蓄音機」から様々な歌が流れていた輝かしい時代の音楽の魅力を、再認識させられております。