「大正のロマンとデカダンス」 ~高畠華宵・江戸川乱歩・横溝正史~

    高畠華宵大正ロマン館 | 愛媛県

    大正文化のムードを表す一方向として、「大正ロマン」および「大正デカダンス」という言葉があります。「大正ロマン」という言葉はその内実を問わないまでも、文学、絵画、音楽を横断しており、現代の私たちにはほぼ共通のイメージを持つことが出来るようになりました。  一方、「大正デカダンス」は「大正ロマン」よりもより強烈かつ重要な大正の社会心理を反映しているにもかかわらず、この主題についての関心はうすく、反社会的色彩が濃いゆえに暗いムードがまとわりついています。従って、これについては断片的に語られて来たに過ぎず、その考察には未だ共通認識が持たれていません。 この現状の中で、美学者・谷川渥(たにがわあつし)はデカダンスという概念を次のように捉えています。つまりロマンが憧れや自然との一体感を望む向日的欲望であるのに対して、背日的なデカダンスを、「崩壊へと向かう人間存在の状態ないし気分」と定義し、次の3点に焦点を当てて説明しています。それは精神的に「正常」に対蹠する状態や気分であり、健康に対する「病」、法的規範に対する「犯罪」、正常なエロスに対する「変態」であり、この三者が複雑にからみ合って「大正デカダンス」を成立させているとしています。ロマンとデカダンスもまた、決して二区分されるものではなく、二者が密接に混交されているところに大正文化の特異さと豊かさが現象として表われ来ると言えるでしょう。 高畠華宵・江戸川乱歩・横溝正史(大正ノスタルジーとして)の中には、それぞれの技法でロマンとデカダンスが共存しており、大正の民衆心理の中にある欲望の広さを感じさせてくれます。 本展では高畠華宵作品に加え、丸尾末広(まるおすえひろ)、多賀新(た が しん)、杉本一文(すぎもといちぶん)が描いた江戸川乱歩と横溝正史の「犯罪」に焦点を当てた作品世界をご紹介します。「幻想」「狂気」「退廃」「美醜」「悲哀」「因習」などがキーワードになるでしょう。さらに人形作家の森馨(もりかおる)、衣(はとり)hatori、清水真理(しみずまり)、池田祐美(いけだゆみ)らの人形もデカダンな気分を高揚させてくれることでしょう。 大正のロマンとデカダンスは、どちらも現実社会から逃避・乖離しようとする人間の意識を高揚させます。現代人に欠如しがちな「想像力」を刺激する豊かな幻想耽美の世界を体験して頂ければ幸いです。
    会期
    2015年5月23日(土)〜8月31日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館締切は30分前)
    毎週土・日
    料金
    一般(中学生以上):700円/障がい者手帳をお持ちの方は100円引き
    小学生以下、「華宵会」会員:無料
    休館日 毎週土・日・月曜日開館/7月18・19日は学会開催のため臨時休館予定
    公式サイト http://www.kasho.org/tenji.html
    会場
    高畠華宵大正ロマン館
    住所
    〒791-0222 愛媛県東温市下林
    089-964-7077
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