このたびサイトウミュージアムにおきまして、初の現代作家による個展を開催いたします。
画家・津上みゆきは、東京で生まれ大阪で育ちました。1996年ニューヨーク滞在中に制作や作品について再考する機会を得、作品名にはViewという言葉が冠されることになりました。津上にとってのViewとは、「みえるもの/眺め」と「みること/見かた」という二つの意味をもちます。
そして、作品名には月日や時刻が記されています。これは、風景を眺めるだけの意味にとどまらず、移りゆく時を意識し往還しながら考えるという独自の風景観や制作方法に根差しています。現場でのスケッチと、そこからキャンヴァス画へと向かう過程で思考を重ねる「スタディ」は、その場に関わりのある人々や文化を含むさまざまな魅力を伝えるとともに、絵画というジャンルのもつ可能性をも広げています。
津上が日頃慣れ親しむ鎌倉の景色は、現在の三重県鈴鹿市出身で幼い頃を松阪で過ごした歌人・国文学者の佐佐木信綱もかつて目にし、歌を詠みました。本展1階展示室の空間を構想するにあたり、手前の部屋は信綱の唄「微風のかよふ夕庭におり立ちて唯一人なるわれを喜ぶ(歌集『常盤木』より)。奥の部屋の新作群は「山黙し水かたらひて我に教え我をみちびくこの山と水と(歌集『山と水と』より)に対する津上の共鳴がそのきっかけとしてあります。
さらに、本展開催に合わせ、鈴鹿市の佐佐木信綱記念館との連携が実現しました。同記念館では「詩歌・文学と挿画 佐佐木信綱と津上みゆき」展が2026年1月18日まで開催されます。信綱の歌集に添えられた近代画家たちによる装幀と、津上による日経新聞での連載小説挿画などが織りなす魅力的な展示構成となっております。