主な出品作品は、カミーユ24歳の時に制作され、彼女が独自の道を開いた≪シャクンタラー≫(1888)師ロダンとの愛の苦悩のさなかに制作された最高傑作≪分別盛り(第2ヴァージョン)≫(1898)、≪オーギュスト・ロダンの胸像≫(1888)、親密な室内彫刻として知られる≪炉端の夢≫(1899)などに加え、カミーユの最初の師、アルフレッド・ブーシェの≪読書するカミーユ≫(1876)、オーギュスト・ロダン作≪フランス≫(1904)もあわせて展示されます。
カミーユ・クローデルは、フランス近代彫刻の巨匠オーギュスト・ロダンの弟子、助手でありながら、愛人、そして死までの30年間を精神病の療養所に幽閉されて過ごすという、波乱に満ちた生涯を送りました。その作品は、動的なポーズや激しいエネルギー、肉感的な肉付けといった点でロダンとの影響関係が見られる一方、赤裸々な自伝的テーマ、物語性や演劇性を帯びた独自の世界、そして愛の安らぎを願う親密な世界の希求など幅広い主題のヴァリエーションが見られます。
本展覧会は、カミーユ・クローデル研究の第一人者、レーヌ=マリー・パリス氏(パリ在住、フランス)のコレクションで構成されます。同氏は、カミーユの弟で、詩人・劇作家、外交官で日本大使も務めたポール・クローデルの孫にあたり、伝記『カミーユ・クローデル 1864-1943』(1984年)や、カタログ・レゾネ(全作品目録)『カミーユ・クローデルの作品』の編纂者として広く知られています。同氏が監修を務め、現在パリのマルモッタン美術館で開催されている「カミーユ・クローデル」展は、好評のため会期が延長されています。この展覧会の主要作品は本展覧会でも展示されます。
また、カナダでも、「カミーユ・クローデルとロダン-ふたつの運命の出会い-」展(カナダ、ケベック国立美術館2005年5月26日~9月11日)など、今世界的にカミーユ・クローデルが注目されています。
名声を獲得しながらも、巨匠ロダンの影響力から脱しよう、超えようとするうち、ロダンとの愛の破局をむかえ、精神に破綻をきたしてしまったカミーユ。社会や家族との衝突、愛と葛藤といった宿命の中で苦しみながら、制作していった、時に痛々しいまでの心の造形。1世紀も前に自由な生き方を求めて苦闘した女性彫刻家の姿が、完成度の高い輝きのある作品を通して、現代を生きる私たちにも共感する何かを訴えかけてくることでしょう。