1854年の創業以来170年を越えるルイ・ヴィトンの歴史を讃えて、高級メゾンと日本との深いつながりを紐解く展覧会が大阪中之島美術館を舞台に開催されています。
キュレーターであり美術史家のフロランス・ミュラー氏が厳選した1000点以上ものアイテムと、200点を超える日本の伝統工芸品です。単なる回顧展とは異なり、匠の技、クラフツマンシップを通して、伝統を重んじつつ、創造的未来を切り開くメゾンの旅路をアトリウムのインスタレーションを含む12のテーマで多角的に紹介しています。
大阪中之島美術館のロビーに歩を進めると、世界的建築設計事務所OMAの重松象平氏が手掛けたトランクタワーが出迎えてくれます。和紙、日本、夏祭りなどと連想しながら「ビジョナリー・ジャーニー」展への期待が高まります。

大阪中之島美術館ロビーの吹き抜け
トランクタワーを見ながら5階へ、次にトランクのへミスフィア(半球)をくぐって展示室入口へと進むのですが、この時点でオシャレな気分に満たされます。

トランクのへミスフィア(半球)
アニエール(Asnières)
ルイ・ヴィトン創業者の邸宅と伝統的なトランク製造のアトリエでもあるパリ郊外の「アニエール」が再現されています。

アニエール
原点(Origins)
メゾンを象徴するトランクを中心に、歴史的資料や映像を交えた展示に興味は尽きません。特命全権公使としてフランスに常駐した鮫島尚信は、1874年にルイ・ヴィトンのトランクを購入した初の日本人顧客、そのポートレートも展示されています。

鮫島大使
冒険(Expeditions)
旅とトランク、移動手段の変化に合わせて様々なタイプのトランクが登場、見ているだけで想像がふくらみ心踊ります。

ヴィトニット·キャンバスのトランクとティルベリ馬車
ルイ・ヴィトンと日本(Louis Vuitton and Japan)
1867年パリ万博に初参加した日本、ヨーロッパにジャポニスム・ブームが巻き起こりました。ルイ・ヴィトンの孫ガストン-ルイ・ヴィトンも日本美術品を収集し、相当な日本贔屓だったようです。ここでは、ルイ・ヴィトン家の日本コレクションやデザイナーたちが日本に触発されて製作した数々の作品を見ることができます。

展示風景

展示風景

展示風景
素材(Materials)
ルイ・ヴィトンのトランクは、木材、金属、レザー、キャンバスの4つの主要素材が高度に融合した作品です。このコーナーは、展示ケースに納められたひとつひとつの芸術作品を眺める気分です。

展示風景
モノグラム・キャンパスの歴史(History of Monogram canvas)
1896年、二代目ジョルジュ・ヴィトンのデザインにより誕生したメゾンの象徴であるモノグラム・キャンバス。このデザインは、日本の刀の鍔や家紋にインスピレーションを受けたのではないかと考えられます。
これは、パリのギメ東洋美術館に展示された将軍 徳川家斉の旅行用トランク(鋏箱)ですが、これらの紋章とモノグラム・キャンパスのモチーフは視覚的に類似しています。

展示風景
モノグラム・キャンパス(Monogram canvas)
19世紀よりパリ市立公文書館に収蔵され、近年再発見されたモノグラム・キャンパスのオリジナル・サンプルが初公開されています。100年以上の時を経ても色褪せず、美しく無傷の状態、これは必見の展示品です。

モノグラム・キャンパスの商標登録サンプル
アトリエ(The workshop)
ひとつひとつの製品を陰で支えている職人たちの匠の技が光ります。

©LOUIS VUITTON

平野紫耀さんのスペシャル・オーダー「ツールボックス・トランク」
耐久試験(Testing)

展示風景
アトリエ「ラレックス」(Atelier Rarex)
アカデミー賞やメットガラなどでセレブリティが着用するためのオーダーメイド専門のアトリエ。

2025年5月カンヌ国際映画祭にて広瀬すずさん着用ドレス
コラボレーション(Collaborations)
1997年にプレタポルテを発表して以来、現代アーティストの草間彌生や村上隆とのコラボレーションを通じて、また、ストリートウェアのシュプリームとの取組みによってメゾンのコードやラグジュアリーの限界を押し広げてきました。更なる可能性が楽しみなコーナー。

展示風景
ギフトショップ
ルイ・ヴィトン「ビジョナリー・ジャーニー」展@大阪中之島美術館のギフトショップ限定商品やサービスがあります。このチャーミングなたこ焼きの刻印も本展限定です。可愛い。ギフトショップは、本展をご鑑賞時のみご入場いただけます。

ギフトショップ
ルイ・ヴィトンCEO代理のダミアン・ベルトラン氏の素敵な言葉です。「大阪・関西万博が開催されている2025年は、大阪は日本の中心であり、世界の中心でもあります。これまでメゾンとして先駆的に万博に携わってきたルイ・ヴィトンが、このタイミングで新しく美しい大阪中之島美術館にて本展を開催することは大変意義深い。」
色々な角度から十二分に楽しめる展覧会です。是非、お出かけください。
[取材・撮影・文:hacoiri / 2025年7月16日]