現在50代の3人は、東京芸術大学工芸科で共に学び、交友を続けている仲間でもあります。3人は大学で、教授達、OBの作家、共に学ぶ学生など多くの出会いから影響をうけ、また師となる人物とも出会っています。努力を重ね、確かな伝統の技を身に付け、技の探求や新しいテーマを求めて、現在も日々研鑽を積んでいます。伝統の技は各時代の技やアイデアの積み重ねであるとの考えから、連綿と受け継がれてきた伝統に現代生活の新しいアイデアを考えて作られた作品をご覧いただきます。3人の作品あわせて約100点を本館、新館でご覧頂きます。新館ではモネの『睡蓮』も展示いたします。
陶芸家の高橋誠は、在学中、田村耕一の教えを受け、大学院終了後に藤本能道のもとで、絵付けと釉薬の研究を学びました。1986年、小田原市根府川に築窯し、年に数回開催する百貨店の個展を中心に精力的な創作活動をしています。現在は、日本工芸会正会員であり、伝統工芸新作(東日本支部)、新作陶芸展(陶芸部会)の審査委員を務めるなど、陶芸会の中堅世代の一人として活躍しています。本展では、高橋が得意の花鳥を描いた色絵磁器の組皿や染付けの作品など新作をあわせて約50点を展示します。
河野三秋は、大学では金工分野の鋳金を専攻し、平松保城から彫金、卒業後に鋳金の技術も学んだ作家です。卒業後92年まで、日本クラフトデザイン協会会員として活躍しました。現在は百貨店やギャラリーでの個展を中心に創作活動を続けており、作家として制作に励む一方で、ヒコ・みづのジュエリーカレッジでは後進の育成に携わっています。作品の制作で扱う素材は金、銀、銅、真鍮、鉄など様々です。本展では、近年力を注いでいる、レリーフやオブジェ作品を新作を含め約20点、新館を中心に展示します。
漆芸家の室瀬和美は、大学在学中は田口全国に、学外では松田権六に教えを受けました。また室瀬は父の春二も漆芸家でしたので、子供の頃から漆の仕事の苦労と喜びを見て育ちました。現在は日本伝統工芸展や日本伝統漆芸展などで作品の発表を続けながら、文化庁などの依頼による文化財の修復にも力を注いでいます。本展では伝統的な技を盛り込んだ硯箱など約20点とあわせて、蒔絵ハープを2台展示します。ハープは現代にふさわしい漆芸作品をという思いを込めて作られた室瀬の代表作の一つです。