古くより、さまざまな事象と知識を収拾し、編纂されてきた百科事典と博物誌。集成される情報、分類、記載、記述内容は、時代によって変わりますが、古代ローマのプリニウスがまとめた『博物誌』や、秦から漢の時代に編纂された『爾(じ)雅(が)』などは、知的遺産として現代でも多くの分野で繰り返し引用されます。また、特に、これらの偉大な書物の恩恵を受けられるようになった背景には、印刷術の発明と発展があります。
西洋では15世紀半ば以降、活版印刷技術によって、ドイツ、イタリア、フランス、イギリスを中心にギリシャ・ローマ時代の歴史的な書物が印刷され、学問の発展に貢献しました。一方、東洋では、中国を中心に、特に明代において、盛んに博物誌が印刷され、日本にも伝わりました。
また、これらの書物に登場する図譜は、国内のみならず海外からの関心を集めるきっかけとなり、お互いの文化を知る重要な手がかりとして、東西交流を盛んにしました。
本展覧会では、印刷によって後世に伝わった古今東西の博物誌と百科事典、ならびにさまざまな図譜を展示し、それらの役割と、とりわけ図版の制作に寄与した印刷技術について解説します。教科書や資料集などに断片的に登場する、歴史的な書物。その誕生した経緯、背景について知の体系化という視点から広く紹介します。