川島慶樹は、本格的な作家活動に入った1980年代中頃から、石と木、鉄やブロンズ、などを使って彫刻作品を制作してきました。また、並行して絵画も描き、個展やグループ展、野外彫刻展などに出品。今日の関西のアートシーンの中心をなす作家の一人として活躍して来ています。川島の手で創出される作品は、いずれも有機的な形状が特徴です。円形や曲線、放物線といった線形に、木の持つ素材感を生かしながら、動物的とも植物的とも、また抽象的で生命感のある個性的な作品に仕上げられており、それらは、観る人の心や感性を自由に解放し、様々な形象やイメージを喚起します。
本展は、川島が創作活動の拠点として日常使っているアトリエ空間を、ギャラリーの中に再現することで、作家の「現在」を身近に触れていただける展覧会です。新作をはじめ未発表作品や未完成作品、あるいはさりげなく置かれたオブジェなど、完成された作品を体系的にみせるだけのものではなく、観る人が作家の息づかいを感じ取っていただける実験的な試みの、意欲的な展覧会です。矩形を主体とした幾何学的な形態を持つ奈義MOCAと、川島作品の持つ独自の創造の源泉とが、緩やかなせめぎ合いをみせ、独特のコラボレーション空間を生み出していきます。