あなたの夢は何ですか? あなたの夢はどこにありますか?
大正時代は「憧れ」の時代でした。近代的生活つまりモノへの憧れ、西洋など異国への空間的な憧れ、江戸時代など過去への時間的な憧れ。大正デモクラシー、第一次世界大戦、関東大震災、女性解放運動、米騒動、労働運動など社会が揺れる一方で、百貨店や映画産業など消費・娯楽産業の隆盛、新聞雑誌ラジオなどマスメディアの誕生など、大衆の中に新しい文化を楽しむ風潮が生まれました。つまり人々は近代的生活の中にいくつもの「夢」を見ていたのです。
しかし理想と現実、革新と伝統(因習)の狭間で混迷する人々の心は、「夢」の中に安らぎを求めるようになりました。近代の合理主義が向日的な光あふれる夢であるとすれば、その影に潜む幻想世界もまた、人々の夢の世界でありました。「光の夢」と「影の夢」が入り混じった独特の美意識、それが「大正ロマン」と呼ばれる時代感覚です。竹久夢二、高畠華宵、蕗谷虹児、加藤まさを、須藤しげる、中原淳一などいわゆる「大正ロマンの抒情画家」と呼ばれる画家たちが織りなすセンチメンタルな作品世界は、現実から目を背けた大正の人々の「夢」の場でありました。
戦後70年を経て、平成の私たちの夢は何でしょうか?頻発する国際紛争や民族紛争、ネット住人の問題、環境問題、少子高齢化問題など様々な社会の矛盾を前にして、人々が抱く心の闇は深まるばかりです。そして大正時代の人々と同じく、現代の人々もまた幻想世界に「夢」のありかを求めています。
高畠華宵大正ロマン館は10月に開館26年目に入ります。25年目から続けている「幻想耽美」をキーワードにした展覧会活動ですが、今回は華宵と同時代の画家(竹久夢二、蕗谷虹児、須藤しげる、中原淳一など)を加え、「夢」をテーマに平成の球体関節人形とのコラボレーションを行います。時代を超えて呼応し合う幻想世界は、私たちにどのような「夢」を与えてくれるでしょうか?