私たちヒトを含め、ネズミもニワトリもハエもクラゲも、そして、植物もどんな生物も基本的にはたったーつの細胞(受精卵)からその一生が始まります。受精卵は、その時々に働く遺伝子の指令を受けて、先ず分裂(卵割)によって2個、4個、8個…と細胞数を増やした後、それぞれの細胞に役割分担が生じて筋肉や神経、腸など(植物ならば根や葉、花など)をつくっていきます。その結果、最終的にヒトならヒトの、ハエならハエの、植物なら植物の複雑な形になります。この形づくりの過程を「発生」といい、どのように遺伝子が細胞に働きかけて形づくりを進めるのかという仕組みを解明するのが「発生生物学」です。発生生物学は、発生過程で働く遺伝子の働きを様々な生物の間で比べることで、生物の進化についても語り始めています。発生生物学は、さらに、医学や農学にも深くかかわっていて、iPS細胞に代表される再生医療にも大きく貢献しています。
本展は、2017年に創立50周年を迎えた発生生物学会とともに、国立科学博物館としては初めて、この発生生物学に焦点を当て、この分野の最先端の研究成果やこれまでの歴史などを通して、生きものの形づくりがどのように進むのかを紹介します。
展示は、日本館1階企画展示室(第1会場)と地球館1階オープンスペース(第2会場)で構成されています。第1会場(Zone1-14)では、腸や脳は単純な管からつくられることや、「水かきのない鳥(ニワトリなど)」の足と「水かきのある鳥(アヒルなど)」の足のでき方を比べ、細胞が増えるだけでなく減ることでも形づくりがすすむことも紹介しています。また、発生生物学者が「発生」を研究する最先端の現場もご覧いただけます。
第2会場(Zone15)では、地球館1階の「系統広場」と関連付けて、卵から大人になるまでの形づくりを比べてわかった海産無脊椎動物の親戚関係について紹介しています。