鈴木秀明展

絵を描いて４５年。これまで幻想的リアリズムの手法により、石像などが時間と共に、風化し崩れている有様を描いてきました。歪んだ形、欠けたものなどの形の中に、完成された物には無い不安感やはかなさがあって、私の心を引き付けて離しません。 振り返れば平成元年１１月２３日、具象画壇の登竜門「安井賞展」の帯広展が藤丸デパートで開催され、小生の作品「地」（２００号）のどこか不気味な存在感も紹介されました。開会式セレモニーに招待され、作家と鑑賞者の心の交流ができましたことは一生の喜びです。また、宿泊先のホテルは勿論、商店街のウインドウには同展のポスターが貼られているのを見た時、芸術文化に対する憧憬とそれを感受したいと願う十勝の人の文化精神の水準の高さに感銘しました。 今回、２８年ぶりに紹介いたします作品は、前回とは対照的に、絵を描き始めた原点に立ち返って、もう一度、自然や静物を描き、等身大の自分を発見しようと考えております。