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    すみだ向島EXPO 2023
    すみだ向島エリア(墨田区京島・八広・文花 ほか) | 東京都

    「すみだ向島EXPO2023 百年の祝福」(以下、すみだ向島EXPO)が始まりました。2020年から始まった「すみだ向島EXPO」は、今年で4回目。開催場所となる「すみだ向島エリア」は、東京スカイツリーにほど近く、戦前からの長屋が東京で最も多く残る地域です。サブタイトルの「百年の祝福」には、関東大震災(1923)を乗り越え、東京大空襲を免れたこの地域へ寄り添う気持ちが込められているように思います。

    アクセスとしては、押上駅(東京メトロ)、曳舟駅(東武鉄道)、京成曳舟駅(京成電鉄)が最寄り駅になります。駅周辺は再開発が進み、大型ショッピングセンターやマンションが立ち並びますが、15分くらい歩くと、「すみだ向島エリア」に到着します。それでは、「すみだ向島EXPO」の初日の様子をご紹介します。

    開幕のテープカットで、「すみだ向島EXPO」が始まります。ファンファーレは、「夕刻のヴァイオリン弾き」を出品している作家のアカペラです。なごやかな雰囲気でセレモニーが進行していきます。



    オープニングのテープカット(後ろの建物は、総合受付の京島駅)


    総合受付で会場地図をもらい、おすすめのピックアップ展示情報から見ていくことにします。最初に向かったのは、国際文化交流事業「すみだ×台湾アートロビー」の会場です。 「台湾アートロビー」は、今年のはじめに蒲郡で開催された「ととのう温泉美術館」にも出品していたアーティストグループです。



    (左の5個)呂文《犬に至る形》、(右の2個)夏愛華《光の守護者》 すみだ×台湾アートロビー


    展示空間が一般的な家屋の中なので、以前にホテルのロビーで見た時よりも、作品が身近になった印象です。右側の2体の作品は、この部屋の主のような貫録が出ています。

    周文欽の映像作品は、とても穏やかで、心地の良い作品です。床に置かれた座布団に座り、見上げるように眺めていると、水の中から水面に向かって、ゆらゆらと浮かび上がるような気持ちになります。クーラーではなく、窓から入る自然の風が心地よかったです。



    周文欽《ときの場所 A place between time》 すみだ×台湾アートロビー


    体験型のインスタレーションで印象的だったのは、田中菜穂子の《欠片の庭》です。会場には靴を脱いで入るのですが、入口にたくさんの靴が並んでいて、人気ぶりがうかがえます。



    田中菜穂子 《欠片の庭》


    上体をかがめ、雑木林の枝の下をくぐるように会場を進みます。細い枝を踏む感覚、頭や腕に当たる葉っぱや小枝の感触など、美術館の展覧会では味わえない、とても新鮮な鑑賞体験でした。

    触覚を刺激する作品としては、Saiki Ayaneの《膜/Envelop》も良かったです。天井から垂れ下がる白い大きな布には、たくさんの縫い目がつけられています。ところにより、縫い目が密集していたり、ほとんど縫い目がなかったり、糸の引っ張り具合で、布に細かなしわのよるところ、しわのないところ、様々な布の表情が見て取れます。

    部屋の壁ほど離れておらず、着ている服ほど密着しない、両者の中間くらいの抱擁感のある空間になっています。



    Saiki Ayane 《膜/Envelop》


    We are Buddiesは、《子どもとおとなのバディプログラム》写真展を展開しています。 このグループは、「社会の多くの登場人物が子育てに参加する」社会を目指して活動している実践型のプロジェクトグループです。美術作品の展示というよりは、これまでの活動報告のような内容です。この日は、展示会場の中庭にテーブルを出し、フリマのような催しもありました。



    We are Buddies 《子どもとおとなのバディプログラム》


    《けん玉横丁長屋》は、エキスポ百貨店になっています。この日は、店頭にアンティークなライターが並んでいました。長屋街の中でひときわ目を引く、真新しい長屋です。



    吉原聖 《けん玉横丁長屋》


    エキスポ百貨店以外にも、軒先に色とりどりの手芸用品を並べたお店もあります。お値段もお安く、とてもにぎやかな雰囲気です。



    お店の軒先の様子、OPENしています


    「すみだ向島EXPO」の会期は始まったばかりということで、会場には制作途中の作品もあり、会期後半になれば、鑑賞できる作品がさらに増えると思います。日常的な地域の方の暮らしぶり、非日常的な展示作品、さらに非日常的な観客の存在、それらが混ざり合って、独特な雰囲気を感じられる1か月が始まります。

    これから、「すみだ向島EXPO」に出かける方へのアドバイスとして、都合がつけば2、3回に分けて訪問することをお勧めします。今回のチケットは、10月30日まで、何回でも入場できるので、1回目は、ぶらぶらと全体を見て回り、2回目は、興味を惹かれた作品をじっくり見て、3回目は、何かのイベントに参加するような楽しみ方はいかがでしょうか。

    最後に、街なか会場を見て回る時の心配として、ランチとトイレの問題があると思います。「すみだ向島EXPO」では、開催場所にキラキラ橘商店街を含むので、ランチには困りませんが、時間帯によっては待ち時間があります。また、トイレは総合受付をはじめ、展示会場のいくつかで利用できるので、場所がわからなければ、会場のスタッフに聞きましょう。 それでは、「すみだ向島EXPO」を目いっぱい楽しんでください。


    [ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2023年10月1日 ]


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    会場
    すみだ向島エリア(墨田区京島・八広・文花 ほか)
    会期
    2023年10月1日(日)〜10月30日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00〜18:00
    *一部の会場やイベントなど時間外コンテンツもあります。
    休館日
    火・水・木曜日
    住所
    総合受付『京島駅』 東京都京島駅  東京都墨田区京島3丁目50−12
    公式サイト https://sumidaexpo.com/
    料金
    料金(一日券)
    一般 ¥3,500
    高校生・大学生 ¥2,000
    中学生以下:無料
    展覧会詳細 「すみだ向島EXPO 2023」 詳細情報
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