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    ミホミュージアム 「赤と青のひみつ 聖なる色のミステリー」
    MIHO MUSEUM (ミホミュージアム) | 滋賀県

    ミホミュージアム 「赤と青のひみつ 聖なる色のミステリー」

    撮影・文 [エリアレポーター]白川瑞穂 / 2018年6月29日


    色といえば誰もが思い浮かべるのが赤と青。
    その2色を軸に、考古資料から世界の古美術や日本美術まで、ミホミュージアムの幅広い所蔵作品で色の持つ意味をあらためて考えてみる展覧会です。

    今回は開館以来はじめて、子供も対象にした展覧会とのことで、小さな子供も大人も、美術展はあまり見る機会がないかもという方も、コアな美術ファンの方も、どなたでも楽しめる工夫や仕掛けが盛りだくさん!
    まるで3D絵本のような世界観をイメージして作られたそうですよ。



    まずは、炎や情熱の色、原始を表すイメージも持つ赤の世界から物語は始まります。
    アメリカ大陸や中国をはじめ、世界の多くの原始・古代社会において赤には特別な力があると思われていたようです。
    中国の皇帝達が永遠の命を夢みて飲んでいた赤い粉の薬は実は毒。逆に命を縮めていたのでした。
    赤色の持つ強いパワーに特別な効果があると思われていたのでしょうね。


    (左)脚付雲文耳杯  中国 前漢時代 前206–後9年 / (右)漆脚台 中国 東周時代 前5-前4世紀

    日本でも赤は魔除けやおまじないに古くから用いられ、今でも神社やお寺で多用されています。
    伊藤若冲が描いた達磨図の達磨がまとっているのは、鮮やかな赤。
    裏彩色でしっかりと塗り込められた赤が鮮烈なインパクトを与えています。


    伊藤若冲筆「達磨図」 江戸時代  18世紀

    この平安、鎌倉時代の仏画によく見られた技法を若冲が自分の作品に多く採用しているのは、 禅宗の深い信仰心を持っていたことと関係していると考えられます。

    続いて、空や海の色、神秘的なイメージのある青の世界へ。
    古代メソポタミアやエジプトでは、神や王を象徴する飾り、神像などにラピスラズリやトルコ石といった青い石が多く使われました。


    隼頭神像 エジプト 紀元前1295-1213年頃

    中国で作られた奇跡の材料コバルトを使った焼き物は朝鮮でアレンジされたり、日本でも作られたり、オランダでは青色の手書きの模様が美しいデルフトに。


    藍絵葡萄唐草文蓋置 オランダ 1700年頃

    そういえば、フェルメールブルーと呼ばれる美しい青が印象的なオランダの画家、フェルメールの代表的な作品である真珠の首飾りの少女が頭に巻いているターバンも青。
    ラピスラズリを使ったウルトラマリンブルーの絵の具で描かれています。
    オランダの青はさらに日本へ渡り、尾形乾山はデルフト写しの陶器を作りました。
    国を超え、時代を超えて受け継がれる青のリレーです。


    乾山色絵阿蘭陀写市松文猪口  江戸時代 18世紀

    また、イスラム陶器にも青が重用され、水色の焼き物が好まれたのは、水の少ない砂漠で水が何よりも大切だったからかもしれません。
    そう考えると、青には人間の憧れを象徴する色なのかも。


    (左)魚形容器 東地中海地域あるいはイタリア 1世紀 / (右) 脚杯 東地中海地域 前3-後1世紀

    作品から少し離れて、色の持つパワーやイメージについて楽しく考えるコーナーも随所に用意されています。



    赤や青のマントを着たり、フェイスペインティングをしてみたり、クイズに参加してみたり、それぞれの色にはどんなパワーがあると思うか、投票してみたり。



    集中力が長く続かない小さなお子さま連れの方でも安心して見て回れそう。

    また、展示室の外には、美術家の青島左門氏による、天然染料で染めた布の回廊が。
    自然光の入るスペースで、いろいろな場所に立って色の重なりを感じて見てください。
    参加者が様々な色で夢の回廊を作るなど、たくさんのワークショップも用意されています。



    色を見つめて楽しみ、もっと知る。この展覧会を見た後では、日常生活でも、色の持つ意味が違って見えて世界が広がりそうですね。

    ミホミュージアムは、信楽の豊かな自然と美しい景色、建築もたいへん魅力的。
    自然農法の食材を使ったメニューが豊富なカフェやレストランも。
    子供から大人まで、夏休みのお出かけにおすすめしたいミュージアム&展覧会です。




    会場MIHO MUSEUM (ミホミュージアム)
    開催期間2018年6月30日(土)~8月26日(日)
    休館日月曜日(ただし、7月16日は開館)、7月17日(火)
    開館時間10:00-17:00(入館は16:00まで)
    所在地滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
    0748-82-3411
    HP : http://miho.jp
    料金大人 1,100円、高校・大学生 800円、小学生・中学生 300円
    展覧会詳細へ 「赤と青のひ・み・つ 聖なる色のミステリー」詳細情報
    エリアレポーターのご紹介
    白川瑞穂 白川瑞穂
    関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。

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    会場
    MIHO MUSEUM (ミホミュージアム)
    会期
    2018年6月30日(土)〜8月26日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00-16:00(入館は15:00まで)
    休館日
    月曜日(ただし、7月16日は開館)、7月17日(火)
    住所
    〒529-1814 滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
    電話 0748-82-3411
    公式サイト http://www.miho.or.jp
    料金
    大人 1,100円/高校・大学生 800円/小学生・中学生 300円
    展覧会詳細 「赤と青のひ・み・つ 聖なる色のミステリー」 詳細情報
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