MIHO MUSEUM (ミホミュージアム)「謎の蒔絵師 永田友治」
撮影・文 [エリアレポーター]
白川瑞穂 / 2019年6月7日
※友治の「友」は、「友」の右上に「ヽ」
江戸時代に活躍した蒔絵師、永田友治。
初めて聞く名前だという方も多いのではないでしょうか。
かつては名高く、素晴らしい作品を残していながら、知る人ぞ知る謎の多い人物です。今回の初の展覧会では、作品だけでなく多数の関連資料も公開され、彼の実像に迫ります。
琳派様式の蒔絵を制作した永田友治は、1711~1716年の正徳年間に、尾形光琳、乾山の近隣に住んでいたことがわかっています。直接の関係性を示す証拠は今のところありませんが、光琳の号である「青々」や「方祝」と大変近い銘を作品に記しています。
共箱 盃共箱蓋表 墨書 「亀貝畵/盃」 盃共箱蓋裏 署名「靑〃子/永田友治」、白文朱方印「友治」(1.6×1.8cm) 合印「+」 貼札 盃台箱蓋表 墨書 「佐久津箱」 盃台箱蓋裏 署名 「靑〃子/永田友治」、黒文方印「友治」(2.0×2.5cm)貼札痕跡
永田友治の作品に用いられている特有の技法としては、合金粉の使用、友治上げ、青漆、刷毛目塗が上げられます。
枝豆蒔絵螺鈿硯箱 1合 24.5×22.4 H5.1
合金粉は、高価な貴金属の金や銀を極力使わず、銅、鉛、錫、亜鉛を中心に混ぜ物として増量材のように工夫されたものですが、独特の美を放ち、時を経ても錆びず美しい色合いを残しています。
つぼつぼ蒔絵盃台(盃盤型)1基 D13.0 H7.7 FD7.1
友治上げは、高蒔絵の下地に使う炭粉や錆漆の下蒔に焼錫粉を用いて、肉上げを一度で可能にした技法で、ぽってりと立体的な風合いに。
青漆は友治がよく使用した深い緑色をヒ素や硫黄、藍などを用いて出したもの。
刷毛目塗はこの時代、珍しい技法ではないものの、漆の粘性を増す豆腐や卵白、膠を加えて刷毛目塗用の刷毛で漆の塗膜に山と谷を作る技法。
絵替蒔絵吸物椀 20客 各 D12 H8.4
こうした技法が用いられたのには、当時の社会背景が大きく影響しています。
金銀粉箔の製造、使用の禁止や、不況によって経済的に厳しい状況にあった町方を相手にしていた永田友治の戦略であり、なるべく安価な材料で、工程は少なく抑えるという工夫だったのです。
どの作品も今までに見たことが無いような美しさと魅力に溢れており、永田友治の作品世界にいつのまにか引き込まれてしまいます。
緑豊かな信楽で、ぜひこの美をご堪能ください。
エリアレポーターのご紹介
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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