「鉅鹿」「磁州窯」って?
今回の展覧会タイトル「鉅鹿」「磁州窯」は耳慣れない言葉です。 「鉅鹿」とは中国の地名で河北省南部の町「きょろく」と読みます。 東洋のポンペイと呼ばれており、1108年、川の氾濫で一挙に泥土に埋没、約800年後の1920年頃、遺跡が発見されました。
遺跡からは、大量の陶磁器や建築址などが出土し、火山噴火で埋没したポンペイを想起させます。今年は発見から100年です。
出土した陶磁器の大多数を焼いていたのが磁州窯。日用の器を大量に生産する民窯でした。
白黒つけるぜ!
チラシに書かれた興味をひくキャッチコピー。
白と黒の器もせめぎあっているようです。
「白黒つけるぜ!」はどのような意味なのか探ってみます。
展示室に入るなり、2つのやきものは対峙しています。
白の代表
「白地黒掻落牡丹文如意頭形枕」北宋時代(12世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】
桃のような形に、牡丹の花。料理を載せる器に見えます。
しかし筆で描いたように見える牡丹は彫り文様であらわされています。
白化粧した器に鉄絵具を塗り、文様を線彫りし、白い背景は鉄絵具を掻落しています。
実に手の込んだ表現で、掻落しという彫刻のような技法です。
また、ここに載せるのは食材ではなく頭。実は枕だとわかりました。
日本ではなじみの少ない陶器製です。
そしてチラシ写真からは決してわからない、曲線の造形にもびっくり。 驚きが次々と上塗りされていきます。
黒の代表
「黒釉線彫蓮唐草文瓶」磁州窯系 金~元時代(13~14世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】
こちらは、黒釉をたっぷりかけ、線彫りを施し、下地のうすい黄色と黒のコントラストで文様を見せています。
近づいて見ると、黒釉の厚みが複雑に変化しているのがわかります。
線や面で掻いただけではなく、黒釉の面も必見。表情が豊かです。
曜変天目と素朴な磁州窯
国宝「曜変天目」建窯 南宋時代(12~13世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】
展覧会には、静嘉堂文庫美術館が誇る至宝、曜変天目茶碗も展示されています。
素朴な磁州窯と曜変天目は全く印象は異なりますが、それぞれが魅力たっぷり。
曜変天目は、1つの斑文を狙ってミュージアムスコープで見ると、透明な釉薬の厚みが感じられます。
斑文の光彩も、釉の厚みの深さによって、違う色を発しているようでした。
饒舌館長おしゃべりトーク
河野館長によるおしゃべりトークにも参加しました。
今回の口演テーマ「磁州窯と江戸絵画は、全く関係がありません」と笑いを誘いながらスタート。
「虫のように近づくと関係がないように見えても、鳥のように遠くから見れば関係がある」と含蓄のあるお話。
磁州窯の展示品と江戸絵画を、鳥瞰しながら唐の絵画に関連づけて解説されました。
下記の枕「蓮」のモチーフは「恋」の掛詞で、枕につながっているのでは?と推察されました。
「三彩白地掻落束蓮文枕」磁州窯系 金時代(12~13世紀)静嘉堂文庫美術館蔵【全期間展示】
「白黒つける」には、はっきりさせるという意味がありますが「白や黒の色をつける」という意味に掛けているのではと思いました。
繊細な宋時代のやきもの、写真では決して伝わらない驚きが一杯です。
その魅力を「目にやきつける」絶好の機会です。
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