今日の人形芸術　-想念(おもい)の造形

　鑑賞や愛玩のための人形は世界各国でみられますが、日本ほど多様な種類をもち、素材も多岐にわたり表現豊かな作品を生み出した国はなく、日本は世界一の人形国といっても過言ではありません。 　信仰の対象として生まれた人形に観賞や愛玩の用途が具わり、いわゆる人形らしい人形が登場するのは、日本では鎌倉・室町時代からといわれます。そして文化が爛熟した江戸時代、技術の進歩とともに贅を凝らした人形が数多く生まれ、人形文化の礎を築きました。 　戦後、日本の人形術はさらなる発展をみせ、多様な表現の方向性と造形力の高さは他国に類のないものとなりました。また、人間の本源的な願望をかたちに表すことからはじまった人形という存在は、既存の造形芸術の領域に対する強い刺激となって、現在では、一部の愛好家に留まらない広い範囲の鑑賞者を得ています。 　本展覧会では、第一部、第二部によって国内、およびドイツ、オランダ、チェコからの6名の作品をあわせて紹介いたします。 【第一部】 昭和初期までの先駆的な作品約30点を展示し、人形芸術における近代性を紹介。ハンス・ベルメールの写真と作品集もあわせて出品する。 【第二部】 伝統的人形の世界を超えた新しい人形工芸の世界を紹介。四谷シモン、大島和代、他の作品約70点を出品予定。