『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』など、数々の名作SF漫画で知られる松本零士(1938–2023)。漫画とアニメという二つの領域で独自の世界を築き、唯一無二の表現で多くのファンを魅了してきました。
突然の訃報から2年。初期作品を含む300点以上の原画に加え、初公開となる資料や思い出の品々を紹介する、没後初となる大規模展が東京シティビューで開催されています。

東京シティビュー「松本零士展 創作の旅路」会場入口
エントランスでは、『銀河鉄道999』に登場する駅のプラットホームと銀河超特急999号のモニュメントが来場者を迎えます。窓の外にはビル群や東京タワー、東京湾の風景が広がり、星野鉄郎とメーテルが夢を胸に旅立ったように、ここから松本零士の「創作の旅路」が始まります。
旅立つ999号の姿、会場に流れる名曲「出発のバラード」、そして『銀河鉄道999』のアニメーションを映し出す大型映像――。海抜250メートルというロケーションならではの大空間で、物語世界へと誘う特別な体験が待っています。

松本零士(本名:松本晟)は福岡県生まれ。自然や飛行機に親しみ、手塚治虫作品との出会いから漫画家を志します。小学生で漫画を描き始め、投稿誌でプロデビューを果たしました。
展覧会の序盤では1950〜80年代を8つの時期に分けて紹介。昆虫漫画や少女漫画、青年の貧困生活を描いた作品など、転機と飛躍に満ちた創作の歩みを「零士メーター」に重ねてたどります。

ZONE1「歩みを刻む_零士メーター」
松本零士の作品は宇宙や生命、人間への深い問いを含み、読む者に旅のような体験をもたらします。『銀河鉄道999』では機械の体を求める少年の旅が、未来へのメッセージとして描かれます。
宇宙や女性、メカなどを独自の視点で表現し、緻密な描写と構成力で物語世界を構築した松本。哲学と想像力にあふれた、唯一無二の世界観を紹介します。

ZONE2「唯一無二の 創作宇宙」

ZONE2「唯一無二の 創作宇宙」
展覧会のラストでは、世界に夢を届けた「Artist Leiji Matsumoto」としての原画を展示。
松本零士のカラー原画は、宇宙を背景に多彩な表情を見せ、強い印象を残します。キャラクターの表情やポーズには物語性が宿り、高い表現力と構成力が光ります。

ZONE3「Artist Leiji Matsumoto」
物語は終わらず、創作の旅はつづいています。空へ、宇宙へと広がる松本零士の世界を、ぜひ会場で体感してください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年6月19日 ]
©松本零士/零時社・東映アニメーション