白化粧のうえに鉄絵具で自由に文様が描かれた粉青鉄絵(ふんせいてつえ)は、韓国の霊山のひとつ、鶏龍山(けいしゅうざん)のふもとで焼かれました。粉青鉄絵は15~16世紀を中心に焼かれ、のびやかな筆墨、笑みをさそうようなユニークな文様を特徴とし、朝鮮時代陶磁の粋ともされています。
鶏龍山窯址は、韓国では初めて発掘調査がおこなわれた窯としても有名です。その成果は1929年、神田惣蔵・野守健編『鶏龍山麓陶窯址調査報告』(朝鮮総督府)にまとめられました。発掘調査の結果、6箇所の窯が確認されたほか、数多くの印花や粉青鉄絵の陶片が出土しました。また、「成化(せいか)二十三年」や「嘉靖(かせい)十五年」(1536年)銘の墓誌などが出土し、粉青の年代を考えるうえで貴重な資料となりました。この鶏龍山発掘の結果は広く受け入れられ、新たな高麗茶碗のひとつとして、あるいは唐津の源流説ともなり、当時大きなブームと起こしました。
戦後、韓国陶磁研究は飛躍的な進歩をとげました、1992、93年には韓国国立中央博物館と湖巌美術館が鶏龍山窯址の再調査を試みました。正式な報告書はまだ刊行されていませんが、学会の期待を集めています。