宸翰は、当館の館蔵品と寄託品を含めた書跡収蔵品の中で一大コレクションをなすもので、今年は国宝5件、重要文化財10件を含む18件の作品が展示されます。去年とは趣向を変えて、二つの点に重きをおいた構成となっています。
まず、後白河天皇・後嵯峨天皇・後二条天皇など、ほとんど自筆が現存しない天皇の宸翰を展示します。たとえば後嵯峨天皇宸翰消息(国宝・仁和寺蔵)は、天災や兵乱が多いといわれた年を霊験によって無事に乗り越えたことについて、仁和寺の道深法親王に謝した天皇唯一の筆跡です。また、同じく唯一の筆跡とされる高倉天皇宸翰消息(国宝・仁和寺蔵)も特別に公開します。
さらに伏見天皇をはじめ、花園天皇・後醍醐天皇など、書の個性が最もよく表れたとされる鎌倉時代の宸翰を多数展示します。とくに伏見天皇のものは、広沢切(重要文化財・当館蔵)とよばれる仮名書きの歌集から漢字の願文まで、「仮名から漢字まで藤原行成にもまさる」といわれた天皇の変幻自在な筆跡をご堪能いただけます。
いずれの宸翰も、あまり眼にする機会のない作品ばかりだと自負しておりますので、多くの皆様にご観賞いただければ幸いです。