「岩瀬文庫は誰のためのもの?」
貴重な古書籍を求め、全国から研究者が訪れる岩瀬文庫。しかし正直なところ、西尾市民の皆さんにとっては、「難しそう」「専門家じゃないからわかんない」「すごい本があることは知ってるけど・・・」と、なんだか「親しみやすい」場所とはいいがたいようです。
じつは、岩瀬文庫は地元西尾資料の宝庫です。創立者の岩瀬弥助は、広い視野で全国から上質な書物を集めましたが、一方でふるさと西尾の教育と文化の向上のため、積極的に郷土資料を収集しました。特に、近代化の波の中で失われつつある西尾藩時代の記録や城絵図を旧藩士から借りて写すなど、地道な資料収集を行っています。また、旧西尾藩の関係者や地元文化人も著書や蔵書を寄贈し、文庫の充実のために大いに協力しました。これらの蔵書は、目録に「三州(=三河)史料」という特別枠が作られ、わかりやすく管理されました。弥助や協力者たちは、誰よりもふるさと西尾の人たちに岩瀬文庫の本を読んでもらいたかったに違いありません。
「専門家じゃないと読めないの?」
岩瀬文庫の蔵書は18歳以上の方なら誰でも読むことができます。もちろん古くて貴重な本ですから、そのための配慮をしなくてはなりませんが、特別難しい技術が必要なわけではありません。「でも、くずし字が読めないし…」という方も多いでしょうが、いわゆる「ミミズがのたくったような」字の本ばかりではありません。なつかしい写真入りの近代の活字の本もありますし、江戸時代の本だって、私たちが普段使っている楷書体の本もたくさんあります。一度挑戦してみれば、意外と「読める」ことに驚くはずです。
本展が、市民の皆さんがこれまで以上に岩瀬文庫に親しみ、じっさいに蔵書を読み、楽しんでいただくきっかけになれば、大変うれしく思います。