本展は2部構成になっており、『一瞬の永遠』ではニューヨークで写真家として不動の地位を築いたアクション・スティル・ライフとスティル・ライフの代表作から約40点を紹介。1980年代初めに、超高速のスピードライトで肉眼では捉え難い瞬間をとらえ、オブジェの移行を永遠の時間の中に凍結させる、超現実ともいえる橋村の作品が、熾烈な競争で名高いニューヨークの広告業界において高く評価されました。橋村は、この独特なスティル・ライフ写真の技法を≪アクション・スティル・ライフ≫と名づけ、まさに水のように流動的なものを瞬時に捉えた代表的な作品シリーズとして位置づけています。
『未来の原風景』では、橋村のオリジナル「HASHIGRAPHY」≪ハシグラフィー≫の作品約60点を紹介します。ここでは、写真と絵画を融合させた作風の中に、橋村のファイン・アーティストとしての新たな可能性と独特の時代やモノに対する価値観が表現されています。変わりゆく時の流れ、止まる事のない時間。漠然とした不安と期待、風化していくことへの諦観。しかし、私たちが未来に伝えなければいけない「現在」とは、何だろうか。私たちの心の中に残り、消し去る事のできない軌跡。激動するこの時代の中でさえ、決して、忘れる事のない過去からの遺伝子。それは私たちの手で、次の世代、また次の世代へと引き継がれていく。時代不詳なモノトーンな作風からは、橋村の「今から千年後、西暦3000年の未来社会で生活する人々の目に、現代がどう見えるか」という、現在の存在意義に対する、強いメッセージが込められています。
写真家・橋村奉臣の人生と芸術に対するあくなき好奇心と情熱によって、時代を追って深みを増していく作品群は、鑑賞する人々の心に強く訴えかけていくことでしょう。そこには自然豊かな日本で育まれた感性と、めまぐるしく変化する先鋭都市ニューヨークで培った高度な技術力との融合が感じられます。写真と共に生き、常に新たな挑戦を続ける、橋村奉臣の熱い視線、鋭い感性をご堪能ください。