難しく捉えられがちな現代アートにも、ユーモア、ジョーク、パロディ、寓話、風刺、ナンセンスなどの「笑い」を通して私たちを取り巻く世界に対する新しい視点や多様な文化的背景を見せてくれるものが多くみられます。
本展では、既成の芸術概念を超える「反芸術」や「フルクサス」など、芸術と日常の関係がユーモラスかつ真面目に議論された1950-60年代の「前衛の笑い」から、1990年代以降の「多文化時代」を主軸に、さらに想像の羽根を広げつつある様々な最新アートまでを紹介します。
日常の延長線上にある小さな笑いから、異なる社会や文化に固有する問題を、ユーモラスかつアイロニカルに表現した笑い、さらに想像の自由が創りだす、現実にはあり得ない世界をファンタジーや寓話を通して見せる笑いなど、世界各地の約50名のアーティストから届けられる「笑い」を通じてあらゆるかたちの「おかしみ」を見つけ、思わず微笑む時、私たちはしがらみのある現実から解き放たれ、先の見えない未来への希望を抱くことができます。そしてユーモアが他者を理解する大切な要素であることにも気付きます。
本展は4つのセクションで構成されます。ヴィデオ、写真、インスタレーションを中心とした各作品のアイデアは、偶発的で感覚的なものから綿密な計画性を伴った論理的なものまで多様です。
これまで作品の中でしばしば脇役に甘んじていた笑い、滑稽さ、ユーモアを表舞台に立たせ、それらを美術館というパブリックな空間で演じ、楽しみ、他者を共有しながら、あらためて考察することで、それらが作品の中で果たす役割や背景・理由など、現代美術とおかしみの関係について探りだしていきます。
◇「笑い」をテーマとする、2つの展覧会を同時開催
森美術館では、笑いとアートの関係を探る展覧会を同時開催します。縄文時代から20世紀初頭までに日本美術の中で表現された「笑い」を読み解く「日本美術が笑う:縄文から20世紀初頭まで」展、そしてもう一展、世界各国の現代アートにおける「笑い」を考察する本展「笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情」。それぞれ笑いをテーマとしながら、違う切り口で時代や背景が異なる作品の中にある「笑い」に焦点を当てる展覧会です。