デッサンの教師である父をもつピカソはマラガに生まれ、マドリードのサン・フェルナンド王立美術アカデミーなどに通うなど若くして才能を発揮しました。少年時代はディエゴ・ベラスケス、フランシスコ・ゴヤといったスペインの巨匠の作品に魅せられ、特に傾倒したのはエル・グレコの華麗な色彩感覚や大胆な人体表現による作品でした。青年期にはバルセロナからパリに渡り、世界の巨匠による作品に感銘を受け、また幅広い交友関係を築くこととなります。そして、1907年の《アビニョンの娘たち》の発表を境に、新芸術「キュビスム(立体派)」の代名詞として世界にピカソの名が知れることになりました。
一方、ダリはフィゲラスの裕福な家庭に生まれ、ピカソと同じサン・フェルナンド王立美術アカデミーに通いました。ダリはスペインの巨匠ディエゴ・ベラスケスはじめフェルメールやラファエロなどの世界の古典主義の画家を生涯にわたり敬いました。青年期にはパリで映画監督や詩人など幅広い交友を広げながらシュルレアリスム(超現実主義)に惹かれ、アンドレ・ブルトン率いるシュルレアリスム運動にも参加しました。1930年代初頭には「偏執狂的批判的方法」による「ダブルイメージ」の手法を用いた作品をもって多才ぶりを発揮しましたが、ブルトンとの不和を理由に同運動を脱退。その後は、美術界のみならず社交界でのパフォーマンスも話題となり“ショーマン”としても大衆の人気を博しました。
このように、ピカソとダリの人物像や作風の遍歴については多数の相違点がみられますが、1930年代後半からスペイン内乱や第二次世界大戦など、人間の理性や思想の変化など共通の主題を扱いました。
本展では、二人の作品を通して、それぞれの作家の個性とその魅力を改めて検証すると共に、2人を生んだスペイン・カタロニア地方の歴史、文化、芸術全般を紹介します。