絵本は、かつては子どもだけのものと考えられていましたが、現在では絵と詞が一体化した複合芸術として、「美術」や「文学」の分野に深く関わるメディアであることが認められてきました。さらに子どもにとって生まれて初めて出会う美術として、その表現の重要性が論じられています。
1960年代以降、日本では、多くの優れた才能が絵本の世界に多彩な表現を展開してきましたが、とりわけ彼らが活躍した共通の舞台に月刊絵本誌「こどものとも」があります。1956年4月の創刊以来、常に日本の絵本界をリードし続けてきた「こどものとも」は2006年3月号で通巻600号となり4月には創刊50周年を迎えました。月刊誌でありながら、毎号ひとつの物語を一人の作家が通して絵を描くという出版形態、絵本の専門作家ではない画家・彫刻家も起用するなど、かつてなかった試みで、児童書出版界に大きな転機をもたらしました。絵本界をリードする多くの絵本作家が「こどのもとも」から出発し、そこで多くの代表作を生み出しています。現代の日本の絵本の活況は、「こどものとも」によって形作られたといっても過言ではないでしょう。人気の作品はハードカバーの「こどものとも」傑作集として刊行されて世代を超えて読み継がれ、さらに欧米やアジア諸国でも翻訳本が出版されて人気を得ています。
展示会場には、絵本の全場面の原作が並べられ、場面ごとに詞(文)のパネルが添えられて、美術館がまるごと絵本に様変わりします。幼い子供様からご老人まで、会場で絵本をお互いに読み合って、絵本の楽しさを満喫していただければ幸いです。