メルヘンの王様　やなせたかし展

　やなせたかしは「アンパンマン」で有名なあまり、若い人達には幼児向けの漫画家・絵本作家として印象づけられているかもしれません。しかしやなせは、もともと大人向けの漫画家として出発し、ラジオの脚本・作詞・詩作・雑誌の編集と、多方面に活躍したアーティストです。作詞の代表は「てのひらを太陽に」、編集の仕事では『詩とメルヘン』の責任編集が良く知られています。 　また、自ら「やなせメルヘン」と名付けた短編絵物語を多く描きました。「アンパンマン」も当初は「やなせメルヘン」の一遍として大人向けに描かれたものだったのです。 　当展では、やなせの仕事の核にある「やなせメルヘン」に焦点を当てながら、その多彩な仕事の全貌を紹介していきます。 　ところで、ファンには「多彩」に見えるやなせの仕事ですが、本陣は自分の仕事ぶりを「方向性が定まらず、代表作に恵まれずに、長い間何をやってもぱっとしなかった」と感じているようです。「アンパンマン」で大ブレイクした時には、すでに70歳近くなっていたいきさつを振り返り、「大変な遅咲き人生」と彼は自分を笑います。 　90歳の誕生日を迎える記念すべき年に、そんなやなせの人生に即して、作品をご覧いただきます。