藤居正明氏は日本大学芸術学部写真学科在学中、長野重一氏に師事しました。卒業後、富士写真フイルム株式会社に勤務しますが、、1969年退社後はフリーのカメラマンとして月刊誌、週刊誌、企業のPR誌等で人物ルポや旅の撮影取材などで活躍しています。日本列島の海とそこで暮らす人々や、自身のふるさとである浅草と下町の生活など日本人のふるさとを共通テーマとして撮影しています。
「とにかく人に興味がある」という藤居氏は雑誌やラジオなどではなくカメラという媒体を通じて人と関わることを選びました。そんな藤居氏の写真の主役はやはり「人」であり、たとえ人が写っていなくてもそこに人の匂い、生活の匂いが感じられる作品です。しかし情緒的になりすぎることなく、あくまで冷静にそして鋭く時代を切り取っています。そこには、昭和から平成にかけバブルがはじめ不況が続く厳しい時代の中で、良い面だけでなく、悪い面も含め時代をそのまま受け入れ記録するという藤居氏の姿勢を見て取ることができるでしょう。
変貌めまぐるしい時代の中で、今はもう見ることのできない景色もあり、また変わらず残っていく景色もあります。新宿の街並みやペアルックで公園で遊ぶ親子、気球による広告など、その一瞬一瞬が時代の「肖像」として四半世紀に渡り東京を見続けてきた藤居氏の写真の中に定着されました。