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    レポート
    ルーベンス展 ─ バロックの誕生
    国立西洋美術館 | 東京都
    西美にピッタリ、壮大なバロックの世界
    17世紀ヨーロッパを代表するバロックの巨匠、ペーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)。イタリアで古代美術と同時代の美術を吸収し、大工房を構えて壮麗な絵画を量産しました。イタリアとの関連に焦点を当てて、ルーベンスの世界を紐解く展覧会が、国立西洋美術館で開催中です。
    ペーテル・パウル・ルーベンス《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》1615/16年 リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
    (左から)ペーテル・パウル・ルーベンス《セネカの死》1615/16年 プラド美術館 / 《偽セネカ像のヘルメ柱》2世紀前半 カピトリーノ美術館
    ペーテル・パウル・ルーベンス《聖アンデレの殉教》1638-39年 カルロス・デ・アンベレス財団
    (左から)ペーテル・パウル・ルーベンス《キリスト哀悼》1612年頃 リヒテンシュタイン侯爵家コレクション / ペーテル・パウル・ルーベンス《キリスト哀悼》1601-02年 ボルゲーゼ美術館
    (左から)ペーテル・パウル・ルーベンス《「噂」に耳を傾けるデイアネイラ》1638年 サバウダ美術館 / ペーテル・パウル・ルーベンス《ヘスペリデスの園のヘラクレス》1638年 サバウダ美術館
    ペーテル・パウル・ルーベンス《スザンナと長老たち》1606-07年 ボルゲーゼ美術館
    ペーテル・パウル・ルーベンス《パエトンの墜落》1604-05年頃、おそらく1606-08年頃に再制作 ナショナル・ギャラリー
    ペーテル・パウル・ルーベンス?《聖ゲオルギウスと龍》1601-02年 カポディモンテ美術館
    ペーテル・パウル・ルーベンス《マルスとレア・シルウイア》1616-17年 リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
    豊満な女性像が日本人の感性とはズレがあるのか、残念ながら日本では「絶大な人気」とは言い難いルーベンス。西洋では抜群の知名度を誇り、西洋絵画史に燦然と輝く存在です。

    今回はルーベンスの作品が約40点揃うなど、近年では最大規模となるルーベンス展。古代美術の宝庫であるとともに、同時代の美術においても最先端だったイタリアとの関わりに焦点を当てた展覧会です。

    会場は7章構成(公式サイトとは少し違います)で、1章「ルーベンスの世界」から。ルーベンスはドイツで生まれ、11歳で両親の出身地であるアントウェルペンに。イタリア滞在の後、この地に工房を構えました。

    2章は「過去の伝統」。1600年、憧れのイタリアに旅立ったルーベンス。古代美術と同時代の美術、双方を吸収して、自らのスタイルを確立させていきます。《セネカの死》では、ローマで目にした有名な古代彫刻(現在はルーブル美術館蔵、本展未出品)を、ほぼそのまま画中に引用しています

    3章は「英雄としての聖人たち ─ 宗教画とバロック」。カトリックとプロテスタントが真っ向から対立していた、この時代。カトリックでは分かりやすい宗教画が求められた結果、ダイナミックなバロックが成立しました。逞しい聖人と気品に満ちた聖女。表情やポーズで感情をあらわにします。



    4章「神話の力① ─ ヘラクレスと男性ヌード」。豊かな想像力で神話画を描いたルーベンス。ヘラクレスを男性ヌードの模範としました。《ヘスペリデスの園のヘラクレス》は、著名な古代彫刻《ファルネーゼのヘラクレス》(本展には未出品)を絵画化した作品です。

    5章「神話の力② ─ ヴィーナスと女性ヌード」。男性美がヘラクレスなら、女性美はヴィーナス。女性を描く際には、古代彫刻のヴィーナスを研究しています。ただ、時代が下るとルーベンスの女性像は理想美を離れ、より自然で肉感的な表現に変化していきました。

    6章の「絵筆の熱狂」とは、17世紀の美術理論家ベッローリが、ルーベンスの絵画を評した言葉です。細部を省略しながらも、素早く熱狂的な筆遣いで、画面に統一感を与えているルーベンス。その特徴は《サウロの改修》などの群集図によく現れています。

    7章「寓意と寓意的説話」。外交官を務めるほど、知識人だったルーベンス。象徴を組み合わせた寓意的な作品は、知識階級だけが理解できます。メインビジュアルの《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》は、神話の一場面でありつつ豊穣の寓意で、西洋文明のはじまりをも意味しています。

    会場動線は、いつものように上階(地下2階)から入り、地下3階に降りて、また地下2階に上るルート。西美の地下3階の展示室は雰囲気が良く、ここに大型の宗教画が来るとバッチリはまりますが、本展がまさにそのパターンです。ごゆっくりお楽しみください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年10月15日 ]


    料金一般当日:1,600円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    会期
    2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30〜17:30
    金曜・土曜日 9:30〜20:00
    ※「カフェすいれん」以外のミュージアムショップ等の館内施設の営業は開室時間と同じ
    休館日
    月曜日(ただし12/24、1/14は開館)、12/28~1/1、1/15
    住所
    東京都台東区上野公園7-7
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.tbs.co.jp/rubens2018/
    料金
    一般 1,600(1,400)円 / 大学生 1,200(1,000)円 / 高校生 800(600)円

    ※( )内は前売、20名以上の団体料金。
    ※チケット販売場所:国立西洋美術館(開館日のみ)、チケットぴあ、TBSチケBOO!他主要プレイガイド※手数料がかかる場合がございます。
    ※前売券は2018年7月2日(月)~10月15日(月)(国立西洋美術館では7月3日(火)から10月14日(日))まで販売。
    ※中学生以下は無料。
    ※心身に障害のある方とその付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
    展覧会詳細 ルーベンス展 ─ バロックの誕生 詳細情報
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