文化服装学院名誉学院長・小池千枝氏が長年収集した世界各国の民俗人形が故郷の長野県須坂市に寄贈されて、1997年に開館した「世界の民俗人形博物館」。民俗人形は各国の文化や服飾、生活を伝える貴重なコレクションです。
その博物館で開催されているのが「しあわせのぬいぐるみパーク展」。歴史的テディベアや日本の著名作家作品など多彩なぬいぐるみが並び、参加型プログラムも充実しています。

世界の民俗人形博物館入口
展覧会の冒頭では、ぬいぐるみの歴史が紹介されます。現存最古のテディベア(レプリカ)などを展示しながら、140年以上にわたる歩みをたどり、素材や製法の変化、各時代の社会背景との関わりを解説。子どもの遊び相手としてだけでなく、時代ごとの価値観や暮らしを映す存在として発展してきたぬいぐるみの魅力が理解できます。

(左上)現存する最古のテディベアのレプリカ「35PB 1904」
シュタイフは、1880年にドイツ南部でマルガレーテ・シュタイフが作ったフェルト製の小さなゾウが始まりです。やがてモヘア製のクマのぬいぐるみを開発し、アメリカで「テディベア」として人気を博しました。
1904年には品質の証として耳にボタンを付ける「ボタン・イン・イヤー」を考案。創業者の「子どもには最良のものを」という理念は今も受け継がれ、シュタイフのぬいぐるみは世界中で愛されています。

シュタイフのテディベア
スロープを上った先のホールでは、ぬいぐるみに囲まれる体験ができます。手前では音楽好きのテディベアたちが小さな楽器を手に、ピアノやヴァイオリン、トランペット、タンバリンなどでにぎやかな音楽隊を結成。仲間と奏でる喜びを表情にあふれさせ、楽しげなコンサートを繰り広げています。

会場風景
ホール中央には、クマを中心にキリンやゾウの子どもたち、小さな動物たちが集まりました。まるで動物園のような空間が広がります。

アニマル大集合
会場中央にそびえるモニュメントツリーは、大小さまざまなぬいぐるみで彩られ、訪れる人々に温かな笑顔と幸福感を届けます。写真映えも抜群で、来場記念の撮影スポットとして人気を呼びそうです。

モニュメントツリー
「ぬい撮りコーナー」では、「絵本」「須坂」「ピクニック」などのテーマスポットで、ぬいぐるみを主役に写真が撮れます。物語のワンシーンのような仕上がりで、SNS映えや旅の思い出作りにもぴったりです。
会期中にはInstagramを使った写真投稿コンテストも開催され、シュタイフ製テディベアや地元スイーツなど豪華賞品が用意され、季節ごとの特別賞も楽しめます。入賞作品は2026年1月上旬に公式SNSやホームページで発表されます。

ぬい撮りコーナー
地域にちなんだ特別なぬいぐるみ作品も披露されています。参加作家は、JUNK FOOD OPERA(幡谷瑛里)、きたむらかの、サリークシー(山形友里加)、moriのえほん(森田寛子)の4名。須坂の風景や文化をモチーフに、一点ずつ丁寧に仕上げられた作品は、かわいらしさに加えて芸術的な存在感も放っています。

須坂にちなんだ特別製作のぬいぐるみ
展覧会の象徴として登場する布の精霊「むすひ」は、布や繊維産業への感謝を込めて生まれ、会場各所で来場者を迎えます。「むすひ」を探す企画や、願いを書いた布片を貼り合わせて大きな作品を作る「むすひウィッシュ!」も実施。小さな布片が集まり一つになる姿は、人々の思いを結ぶ象徴です。

むすひウィッシュ!のコーナー
展望室では、長野県のご当地ぬいぐるみたちが大集合。アルクマをはじめ、地域の自然や文化をモチーフにした個性豊かな仲間たちが揃い、それぞれのユーモラスで可愛らしい姿を楽しめます。

長野県のご当地ぬいぐるみたち
ミュージアムショップでは、銀座の博品館の協力により、さまざまなぬいぐるみのほか、限定グッズも販売。注目は布の精霊「むすひ」をモチーフにしたオーガニックコットン100%のタオルハンカチ(うさぎ型、精霊型、小人型の3種類、各600円)。ほかにも、可愛らしいデザインのオリジナル煎餅2種(各300円)も揃います。

ミュージアムショップ
玩具市場ではトレーディングカードとカプセル玩具が好調ですが、それを凌ぐほどの勢いがあるのが、ぬいぐるみ。推し活の一環としての「ぬい活」も広がりを見せています。
ぬいぐるみの楽しさや文化的価値も改めて実感できる展覧会。ぬいぐるみを持参すると、入館料が割引になりますので、お忘れなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年9月13日 ]