横尾忠則現代美術館「横尾忠則 自我自損展」
文 [エリアレポーター]
カワタユカリ / 2019年9月13日
自画自賛ではなく自我自損。この4文字熟語を見ただけで、横尾さんらしいユーモアを感じ、期待が膨らみます。今回は私たちに何を見せてくれるのでしょうか。
展示会場風景
毎回、展覧会では「かっこいい!」と心打ちぬかれる作品があり浮足立つ感覚になるのですが、今回はちょっと違う空気が漂っているような気がします。
ずんと何かわからない重みがぐっと心を押さえつけているというか。
決して心が動かないというのではありません。
「重み」そんなシンプルな言葉で片付けたくないような何かを感じます。
《愛の錬金術》1990/2019 作家蔵
タイトルでもある「自我自損」は、エゴに固執すると損をするという横尾さんならではの造語。展示会場には様々なスタイルの作品、そして過去の作品(未完作品も含む)に加筆し、新たな作品に変貌させたものが並んでいます。
完成、または中断したものに再度取り組む強さ、新しく生み出す力の大きさ、過去を上回ろうとするプレッシャーなどを想像してしまいます。
飄々と見える作品の上皮が剥れ、アート、自分自身、社会に対して横尾さんがどういう姿勢であるのかが見えたかのようです。
《追憶あれこれ》2019 作家蔵
本展は、横尾さん自身のキュレーションであることも大きな特徴の1つです。
同館で初公開となる《滝のインスタレーション》、黒いカーテンに吊られた作品や今年、東京のSCAI THE BATHHOUSEで発表された《A.W.Mandala》。見逃せない作品が揃っています。
そして皇居の二重橋で記念撮影する集団が描かれた《追憶のあれこれ》。ターザン、原節子、セーラー服姿子供時代の横尾さん。彼の作品に度々登場するメンバーが朦朧とした画面の中にいます。
現実と非現実の曖昧さが描かれているのか、それとも未完なのか。
高齢となり、視野や体力に感じる変化を逆手にとり、今を追及し続ける横尾さんを知ることになりました。
《滝のインスタレーション》1999/2109 作家蔵
《A.W.Mandala》2019 The Chain Museum、個人蔵、作家蔵
横尾さんは、エゴという苔を付けないように転がり続けている石。そのスピードに追い付けるよう、目を見開ていたい、そう思うのです。
エリアレポーターのご紹介
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カワタユカリ
美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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