「円山応挙から近代京都画壇へ」が、京都国立近代美術館で開かれています。
金箔にひかれて、行ってきました。
円山応挙は江戸時代中期の画家で、写生を重視したことに特徴があります。
この展覧会では、円山応挙とその流れを受け継ぐ画家たちの作品が、四つの章(応挙、動物、人物、風景)で紹介されています。
まずは「すべては応挙にはじまる。」の章から。
展示会場に入ってすぐに目に入るのは、応挙による襖絵です。
重要文化財「松に孔雀図」(全16面のうち4面)円山応挙 寛政7年(1795年) 兵庫・大乗寺蔵 通期展示(~12/15)
金箔に墨一色で描かれていますが、見る角度や光の当たり方によって、松の幹は茶色に、松葉は緑色に見えるとのこと。
「思い込みによる目の錯覚ではないか」と思いましたが、少し離れて立ち位置を変えると、本当にそのように見えます。
墨は原料により粒子の細かさがちがうため、光の当たり具合によって発色が変わるものがあるそうです。
襖は兵庫県香美町(かみちょう)にある大乗寺というお寺のもので、本尊である十一面観音の写真も掲げられています。
本来は仏を前にして座り、襖は背後にあります。
美術展では襖絵が主役となりますが、「できれば本来のように襖絵を背中に感じていただきたい」と大乗寺の副住職が話されていました。
360度、仏の世界にひたる空間になるのではないかと思います。
応挙には、下のような作品もあります。
重要文化財「写生図巻(乙巻)」(部分)円山応挙 明和7年~安永元年(1770-72) 株式会社千總蔵 前期展示(~11/24)
身の回りの植物や動物をスケッチし、さらに清書したもの。
写生重視の姿勢は、手本や型が重んじられていた時代にあっては画期的なことで、当時台頭していた町民衆などからも絶大な人気を得たそうです。
「娘深雪」上村松園 大正3年(1914)足立美術館蔵 前期展示(~11/24)
左のほうに写っているのは、上村松園の作品「娘深雪(むすめみゆき)」です。なぜこのような可憐な表情ができるのかと思います。
上村松園は京都に生まれ、明治時代から昭和にかけて活躍した画家です。
応挙の流れに連なる四条派という流派に学び、人物画で独自の世界を築きました。
(ちなみに四条派は、現在、京都のメインストリートである四条通に住む画家が多かったことからそう呼ばれるようになったそうです。)
次の「孔雀、虎、犬。命を描く。」の章では、動物をモチーフとした作品が集められています。
「花卉鳥獣図巻(上巻)」(部分)国井応文・望月玉泉 江戸時代後期~明治時代 京都国立博物館蔵 前期展示(~11/24)
手前に写っているのは、長さが10メートルを超える絵巻物です。
細密に描きこまれ、動物や草花の名がふりがな付きで添えられていて、まさに図鑑です。
(まん中のあたりに写っている黒っぽいものは熊です。)
次の「美人、仙人。物語を紡ぐ。」の章では、応挙による美人画などが紹介されています。
最後は「山、川、滝。自然を写す。」の章です。
「小雨降る吉野」(左隻)菊池芳文 大正3年(1914) 東京国立近代美術館蔵 前期展示(~11/24)
押し寄せるような桜の花びら。現実の季節は冬に向かっていますが、絵の前に立つとあたたかな春の空気を感じます。
・・・
この展覧会は、前期(~11/24)と後期(11/26~12/15)で大幅な展示替えがあります。
また、別の階では展覧会のテーマに合わせたコレクション展(収蔵品展)「円山・四条派の系譜」が開催されていて、竹内栖鳳(たけうち せいほう)など見ごたえがある作品がそろっています(~12/22)。
応挙は単に見たままを写せばよいと考えていたわけではなく、「万物の形を写して気を写すべし」という言葉をのこしています。
自然の気を感じる展示空間は、美術館の外の風景と地続きのようにつながっています。
エリアレポーターのご紹介
 |
tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
|
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?