利府町郷土資料館をたずねて (3)~館の紹介

利府町中央児童センターの3階にある、利府町郷土資料館
2024年4月にリニューアルオープンした利府町郷土資料館は、利府町中央児童センターの3階にあります。町の歴史や文化を紹介する施設で、館内は「常設展示コーナー」と「民具展示コーナー」の二つに分かれています。各展示コーナーでは、定期的に展示入れ替えや特別展示も行っています。

常設展示コーナー
常設展示では、町内の遺跡から出土した考古資料を中心に展示しています。
骨蔵器(須恵器長頸壺・坏)は、9世紀前半、硯沢窯跡の一角で見つかった火葬墓に納められていたもの。頭部を意図的に欠いた長頸壺の中に、細かく砕かれた骨が収められ、須恵器の坏で蓋がされていました。
当時の葬送は土葬が主流だったため、火葬された人物は、鉄生産や須恵器づくりに関わる生産集団の指導的立場にあった可能性があると考えられています。

骨蔵器(須恵器長頸壺・坏)
中央で目立つ大きな模型は、瓦窯跡復元模型です。これは利府町葉山にある大貝窯跡24号窯をもとにしたもので、全長約5.8メートルの半地下式の窯が立体的に再現されています。
内部には製品を載せる焼台が17段以上並び、天井を支える木材の痕跡も36か所に見つかっています。焼台に使われた丸瓦や平瓦も出土しており、当時の瓦生産の技術や構造を具体的に知ることができます。

瓦窯跡復元模型
民具展示のコーナーでは、明治時代以降の暮らしの中で使われてきた生活道具を展示しています。
十符の菅薦(すがこも)は、利府の歴史と文化を今に伝える象徴的な資料。利府町から仙台市岩切にかけての地域は、かつて良質な菅草の産地であり、それを乾燥させて編んだ薦は網目が十筋あったことから「十符」と呼ばれていました。完成した「十符の菅薦」は生活用品として都にも献上され、平安時代から鎌倉時代にかけての和歌や旅日記にもたびたび登場しています。

十符の菅薦(すがこも)
地域の暮らしや文化に根ざした多彩な資料を通じて、過去と現在をつなぐ時間を体感することができる利府町郷土資料館。町の成り立ちや人々の営みに、新たな視点を得ることができるミュージアムです。