前田耕平(1991–)は、自然と人との関係や距離をテーマに、国内外でフィールドワークを重ねながら映像、パフォーマンス、インスタレーションを発表してきました。 川や海、山などの自然、あるいは他者との境界に自らの身体を置き、そこで得た体験の共有方法に関心を寄せています。
2019年頃からは、東京や青森、タイ、オーストラリア、ギリシャなど、移動と滞在を伴う制作スタイルが増えていきます。その中で、各地のサイトに依拠した作品をひとつの場所で再展示をした場合、時間と空間を超えた関係性は生まれるのか——本展はその問いから出発しました。タイトルの「コスモレジデンス」は、前田が実際に居住した建物名と、体系的な世界を想起させる「コスモス」を掛け合わせた造語です。
展示では、建物全体を一つのレジデンス(居住空間)と見立て、過去作を再構成するとともに、広島の太田川の支流を舞台に、広島にゆかりある人々と前田自身がパフォーマーとして共同制作した新作《かりのたより》*を発表します。多様な流れの中を行き来する前田の表現がひとつの空間に合流するとき、新たな関係性をもつ物語が立ち上がるでしょう。美術を通して特定の場所に関わること、表現の可能性について、改めて思案する場となることを願っています。
* 広島市立大学の主催、リフレクティング・ヒロシマの企画・運営のもと、令和7年度大学における芸術家等育成事業「ひろしまアーツカレント 里山と川辺の複数種共有空間を開いて、ハイブリッドな学びの場を創発する」の一環で実施した「雁の便り」プロジェクトによって制作。
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会期中は、トーク、演劇、ラジオ、パフォーマンスなど多様なイベントを開催
詳細はウェブサイトから
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前田耕平 / Kohei Maeda
1991年、和歌山県生まれ。現在、兵庫県在住。2017年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻構想設計修了。2022年から京都・高瀬川の観察を行う「高瀬川モニタリング部」主宰。ルーツとなる紀伊半島での風土や体験、同郷の博物学者である南方熊楠の哲学を根幹に「自然と人の関係や距離」をテーマに活動。国内外の自然地形や生態系、文化や信仰に目を向け、フィールドワークから、写真、映像、パフォーマンス、インスタレーションなどの作品を制作。境界を問い、不可視に触れ、時に祭事のようにその過程と行為を展開する。
近年は「高瀬川モニタリング部」、「動物園の未来ラボ」プロジェクト、舞台の出演・演出など多様な活動を行う。主な展覧会に、個展「点る山、麓の座」(国際芸術センター青森)、「あわいの島」(アドベンチャーワールド、和歌山)、「タイランドビエンナーレ 2023」(チェンライ)、「紀南アートウィーク2021」(南方熊楠顕彰館、和歌山)、など。