ヨーロッパ幻想の系譜

　近代のヨーロッパは合理主義、実証主義的なものの見方を発達させてきました。しかし、その一方で人間の理性を超えた神秘的なものを追い求める思想も、脈々と続いています。19世紀後期にヨーロッパの各地で隆盛を見た象徴主義の芸術家たちは、同じ時代に可視世界を描ききった印象主義とは対照的に、生と死とエロティシズムが交錯する不可視の世界を描き出しています。彼らの作品は、世紀末のアール・ヌーヴォー、ユーゲント・シュティールなどと呼ばれる装飾的な美術様式とたがいに影響を与えあいながら、20世紀の美術を準備しました。20世紀前期にはシュルレアリスムが登場し、夢や無意識を解放することで新しい価値を見出します。シュルレアリスムの芸術家が構築した、夢と現実が矛盾なく同居する世界は、その後の美術に大きな影響を与えています。 　この展覧会では、国内のコレクションからヨーロッパ近代の幻想の系譜に属する美術品を集め、絵画、工芸、彫刻など約120点の作品をご紹介いたします。ルドンやマグリッドなど日本でも人気のある画家の代表作が大量に展示される他、当館が昨年度新たに収蔵したベルギー象徴主義の画家コンスタン・モンタルドの4メートルを越す巨大作品が特別に展示されます。