ベルギーを代表する20世紀の画家ルネ・マグリット(1898-1967)やポール・デルヴォー(1897-1994)に続くロジェ・ソンヴィル(1923-、ブリュッセル生まれ)は、80歳になる現在も精力的に活動を続けており、国内外で常に注目されている現代ベルギー芸術の第一人者です。
社会派として知られるソンヴィルは、現代社会に鋭い目を向け、さらにメキシコの壁画運動やキュビスム以降のピカソ絵画からも影響を受けるなど、独自の絵画世界を展開しています。平和の希求をテーマに労働者や学生運動など時代を反映した人物を壮大な画面に展開し、国内外で「レアリスト運動」の代表的画家として認められています。
1974~76年には、パブリックアートの先駆けともなった、ブリュッセルの地下鉄アンカール駅構内の600平方メートルにも及ぶ絵画「我らの時代」をはじめとする巨大壁画の制作や、ベルギーの伝統芸術でもある、タピスリーの技術復興の推進活動など、油彩やデッサンにとどまらない幅広い創作活動も行ってきました。
また、2001年、スイスのジュネーヴにある国連本部で開催された世界国際人権会議で代表作家として選ばれ、会議場にタピスリー「平和の勝利」など、71点が展示され話題となりました。ソンヴィルの活動は、現代芸術家の中でも非常に高く評価され、その作品は、現在世界40カ国の美術館に所蔵されており、「20世紀ベルギーを代表する50人」のひとりに選ばれています。
本展覧会では、1950年代から現在にいたる、アクリル、デッサン、油彩、タピスリーなど約60点の作品と共に、地下鉄アンカール駅映像、作家のドキュメンタリーも併せてご紹介し、ロジェ・ソンヴィルの約半世紀に及ぶ創作の軌跡をたどります。