=ジャズミュージシャンから画家へ=
音楽の都テネシー州ナッシュヴィルで生まれ育ったライマンは22歳のときにジャズミュージシャンを志してNYへ移りますが、生計を立てるために監視員として働いたニューヨーク近代美術館(MoMA)でマティス、ゴッホ、ロスコ、クラインといった巨匠たちの絵画に感銘を受け、本格的に絵を描き始めました。以来、半世紀近くものあいだ、正方形の画面に白い色を塗ったシンプルな抽象画に取り組んでいます。
=「白はすべてを明らかにする」=
こう語るライマンの白い絵は、絵の具の塗りの筆あと・厚み・透明感・画面素材の色・質感・重量感などが前面に押し出され、絵画の物質的側面があらわになっています。シンプルな色の選択とはまったく対照的に、素材と展示はバリエーション豊か。“油絵具とジュート麻の袋地”、“カゼイン(乳たんぱく)とトレーシングペーパー”など、あらゆる素材の組み合わせを試み、展示もフックで壁に掛ける一般的な手法だけでなく、糊やテープで直接貼り付けたり、自ら設計した特製の取り付け金具を用いるなどさまざまです。
=感覚をひらく「至福の絵画」=
ライマンの絵はありのままでシンプルだからこそ、見るよろこび、画家の手技を味わう至福をもたらしてくれます。その作品群に包まれる時間は、デジタル化する日常環境をはなれて人間本来の豊かな感性が呼び覚まされる、貴重な体験となるでしょう。四季のうつろいに敏感で、繊細な皮膚感覚を備えた日本人こそ、ライマン絵画のデリケートな美を感じ取れるのではないでしょうか。
※ライマンの回顧展はこれまで欧米の主要美術館でしか開かれていません。
日本でライマン作品をまとめてご覧いただける貴重な機会です。他館への巡回はございません。
※展示監督をライマン自身が来日して行う予定です。
日本滞在は7月1日~11日を予定。