明器とは、墳墓に納められた副葬品の一種で、実際とは異なる材質に形を写して、本来の実用性を失わせて来世で使われることを明らかにしたものです。俑は明器の一部で、人間や動物をかたどったものです。明器や俑は、青銅や木など様々な材質で作られましたが、なかでも陶製明器や陶俑は、どの時代においても最も数多く作られました。てのひらに乗る小さな犬から、高さ1メートルを超える大建築模型まで、生活空間を構成する建築や生活用具、そこで生活する人間や動物、そして来世への憧れを描いた器物など、その内容は非常に豊富です。
古代中国の人々は、人間の霊魂は不滅であり、墳墓がこの永遠不滅の霊魂の住まいであると考えていました。また、死後の世界は、現実世界の延長であり、そこでの暮らしぶりは、現世となんら変わるところがないと考えていました。そして、墳墓で暮らす祖先が正しく祀られれば、子孫のために災厄を退け、福をもたらすが、正しく祀られなかった場合や、来世で不幸な目にあった場合には、子孫に悪い影響をおよぼすと信じられていました。そのため、墓主が、満ち足りた生活が送れるように、現実世界のさまざまなものを明器や俑に作ったのです。こうして地下の世界に、現世の生活、それも「生きる喜び」にあふれた理想の生活が再現されました。時には見えないところまで本物そっくりに再現し、またある時には、叙情性豊かに人々が愛した生活の情景を描き出しています。
これらの陶製明器や俑は、各時代の人々の生活を生き生きと眼前に甦らせます。中国古代の人々が来世に持って行きたいと願った生活情景の数々は、必ずや現代の共感を呼ぶことでしょう。